2019 Fiscal Year Research-status Report
LAMP-2のアセンブリ制御を利用した塗布式口腔ケアによる癌治療患者のQOL改善
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17K12005
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
横山 三紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (70191533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LAMP-2 / LAMP-1 / リソソーム / オートファジー / クロスリンク / アセンブリ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療に用いられる抗がん剤は口腔内の感染症リスクを増加させる。感染症にともなう口腔組織の障害は「食べる能力」を低下させ、全身への感染の引き金となる。したがってがん治療時の口腔組織の生体防御機能の維持は治療の成否を決める重要な問題である。生体防御の最終段階では、加水分解酵素を含むリソソームとファゴソームやオートファゴソームとの融合が中心的な役割を果たす。Lysosome-associated membrane proteins 1/2 (LAMP-1, LAMP-2)はリソソーム膜の主要な膜タンパク質である。 LAMP-1, LAMP-2の単量体の構造は酷似しているにもかかわらず機能的には大きく異なり、LAMP-1欠損マウスは顕著な表現型を示さないのに対して、LAMP-2欠損マウスではリソソームとファゴソームの融合が低下することが示唆されている。本研究に先立ち、LAMP-1, LAMP-2では複合体の形成様式に差があることを報告しており、この知見を糸口として、本研究では両者の複合体の構造を明らかにすることによりLAMP-2がリソソームとファゴソームの融合にどのように関与するかを明らかにしたいと考えた。そしてリソソームの融合を亢進する低分子化合物を探し口腔ケアの開発に貢献する創薬の基盤となる知見を得ることをめざす。 本研究では部位特異的な光架橋反応を利用して主にLAMP-2の細胞内での複合体形成の解析をおこなった。その結果にもとづきLAMP-2の複合体形成とシャペロン依存性オートファジーとの関連を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LAMP-1, LAMP-2はどちらもタンパク質の大部分がリソソームの内側に存在し、リンカーで連結された二つの相同なドメイン(N末側-ドメインとC末側-ドメイン)をもつ。これに膜貫通領域と短い細胞質側領域がつながっている。結晶構造解析の結果は、各ドメインが相同なベータプリズム構造をもつことを示している。免疫沈降の実験からLAMP-1同士、LAMP-2同士が複合体を形成することが示されている。そこでLAMP-2のベータプリズム構造の分子表面に光反応性アミノ酸を導入し、光照射依存的な架橋の形成の有無を調べることにより、ベータプリズム相互の配置を調べた。その知見にもとづき、複合体形成に影響を生じるLAMP-2変異体を作成し、LAMP-2欠損細胞に導入してシャペロン依存性オートファジー活性の回復への影響を調べた。 LAMP-2欠損のオートリソソーム形成への影響を調べる目的でおこなった電子顕微鏡観察において、予想外なことに脂肪滴の蓄積へのセラミドアナログN-(1-hydroxy-3-morpholino-1-phenylpropan-2-yl)decanamide (PDMP) の添加の効果がLAMP-2欠損により逆転することを見出した。野性型L細胞ではPDMP添加により脂肪滴の蓄積が亢進したが、LAMP-2欠損L細胞ではPDMP添加により脂肪滴の蓄積が減少した。PDMP添加により脂肪滴のサイズは増加した。一方LAMP-2欠損によりサイズの大きなオートリソソームが出現した。脂肪滴の分解には細胞質のリパーゼによる経路とオートファジーによる経路(リポファジー)があり、後者は脂肪滴のサイズが小さい場合に起こることが報告されている。LAMP-2欠損時にはサイズの大きなオートファゴソームが形成され、PDMPにより形成された脂肪滴をリポファジーの経路で分解できた可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
LAMP-2欠損の効果として今までに報告されているさまざまな表現形に対して本研究で得られたLAMP-2複合体形成の変異体の導入が表現形を回復するかどうかを調べる。また本研究に用いた方法は、光反応性の架橋部位を部位特異的に導入するものであるが、架橋される相手の部位がどこかはわからない。そのためLAMP-2の二つのドメインの相互配置を推定することはできたが、決定するためには架橋の相手側の部位を同定する新たな方法論の開発が必要である。
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Causes of Carryover |
実験に時間がかかったために翌年度にも試薬の購入が必要になったため。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] KIF11 as a Potential Marker of Spermatogenesis Within Mouse Seminiferous Tubule Cross-sections2019
Author(s)
Miki Hara-Yokoyama, Hidetake Kurihara, Shozo Ichinose, Hironori Matsuda, Shizuko Ichinose, Masaru Kurosawa, Norihiro Tada, Chihiro Iwahara, Kazue Terasawa, Katarzyna A Podyma-Inoue, Koichi Furukawa , Kazuhisa Iwabuchi
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Journal Title
Journal of Histochemistry & Cytochemistry
Volume: 67
Pages: 813-824
DOI