2018 Fiscal Year Research-status Report
終末期患者の口腔ケアに関する口腔擦過細診による客観的評価法確立および評価表の作成
Project/Area Number |
17K12061
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
遠藤 眞美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (70419761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 裕之 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70256890)
野本 たかと 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (80246925)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 死生観 / 口腔ケア / 死生学 / 終末期 / 歯学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年間で週末期患者に対する口腔ケアアセスメントシートを作成し,それを用いて医療者が終末期患者に適切な関わりが行えるようにするものである。 初年度は歯科医療者を目指す学生の生や死,死を迎える患者の食や口腔機能に関する考えについて調査し,歯科医療人を目指す学生の死生観は自身の死別経験によって異なっていることがわかった。そこで,歯学教育において生死に関する系統的な教育が必要であると推察した。本年度は,教育が意識形成に変化を及ぼすか等について調査した。 2017年4月の初年度の調査を行えた歯科衛生専門学校2年生に対し,2018年7月に初年度同様の質問票調査を行った。項目は終末期医療,生や死などに対する意識や知識とした。対象は,3年生前期に胎生期から終末期までライフコースとして口腔機能を学ぶ講義を受講している。2017年を講義前,2018年を講義後とすると終末期医療をしたいが講義前13人(33.3%),講義後24人(60.0%)と増加(p<0.001)し,胃瘻造設の相談に関わりたくないが講義前後で10人(25.6%),3人(7.7%)と減少した(p<0.001)。高齢者歯科への興味ありが18人(46.1%)から26人(65.0%)と増加傾向(p<0.1)で,6人(15.0%)が講義を通して変化したと回答した。 各人の死別経験だけに頼らずに生や死を意識させながらの教育を行うことは医療人としての死生観や倫理観の形成,終末期患者への偏見などの軽減に可能性があるとわかった。積極的な生や死の教育によって終末期患者に対する口腔アセスメントアセスメントシートを適切に応用できる歯科医療人の育成が可能となり,終末期患者の人生の満足に寄与できると示唆された。一方で,教育効果としてこの意識変化の割合が社会のニーズに応じられているかは不明であり,教育効果について詳細な検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に理解された意識調査によって作成するアセスメントシート応用時には各医療人の死生観や意識が重要と考え,死生観の形成に対して教育が有効かについて検討することが重要と考え研究方針を変更した。しかし,その調査研究の中で,適切な歯学教育は医療者側の終末期患者への偏見を取り去り,また,各人の死生観の形成に有効であることが解った。それにより,終末期患者に関わる際の医療者側のリスクが把握ができたことによって有効なアセスメントシート作成となると推察できたので概ね良好に進んでいるといえる。本年度は,理解できた内容を参考にアセスメントシートを作成し,施設で口腔ケアを必要とする終末期患者の口腔内状態の把握,細胞レベルでの評価に関して口腔擦過細胞診を実施によって行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019度は,今まで同様に歯科医療職を目指す学生に関する死生観の意識調査を継続する。特に1年生および臨床実習を行う学生についてはより詳細な内容での調査を行う。また,口腔ケアアセスメントを行い,将来,ケアプランを立てる際に協力者となる施設や病院の職員に対して終末期患者への口腔ケア,口腔機能や食に関する対応を行う際の不安や手技の困難な内容などについて質問票調査を行う。その際,終末期患者が入所している施設での現在の歯科医療者,施設内での口腔ケア時の協力体制や共通理解に関する現状把握を行い,どのような評価シートが求められているか,また,その評価シートが適切に応用するために現場における活用時のバリアとなる因子について解析研究を行う。 口腔ケアアセスメント法として応用する口腔粘膜細胞については,終末期患者の口腔内状態の把握を口腔擦過細胞診にて行い,細胞レベルの評価を行う。その際,本人の自覚症状,周囲の困っている内容との関連,また,他の口腔内状況と細胞変化の関連についての検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究申請時には平成29年度,平成30年度に行う予定であった終末期患者の入所している施設での調査を次年度に変更したことで,そのために使用する予定であった消耗品,備品の購入が次年度となったために差額が生じた。平成31年度では変更した計画通り施設での調査に関わる消耗品にあてる。 具体的な実施内容として,医師が終末期患者として捉えている要介護高齢者および対象として申請者が診療を実施している病院の受診高齢者に対して質問票調査,顔貌写真および口腔内診査を行う。口腔内診査では,歯数や口腔清掃状態などの口腔内診査後,雅俗補正用カラーチャートと共に口腔内ビデオカメラで口腔内を撮影する。口腔水分計(モイスチャーチェッカーら:ライフ社製)等を使用し口腔乾燥状態を検査する。可能な場合は口輪筋および舌圧測定を行う。その後,口腔内の舌背部,口蓋部,頬粘膜部,歯肉または歯槽堤の口腔粘膜に対して口腔擦過細胞診を実施し,その後,採取した細胞を通法に従って染色して観察する。
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