2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K12079
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
長尾 式子 北里大学, 看護学部, 准教授 (40396700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門岡 康弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (50404330)
浅井 篤 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80283612)
坂元 眞由美 (川島眞由美) 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (10437444)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 臨床倫理推論 / 倫理推論 / 臨床推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は、H29年度に臨床推論と倫理推論、臨床倫理推論に関する文献レビューし、抽出した臨床推論と倫理推論の特徴と構成をまとめた。まず、臨床推論は医療専門職間で共通点、相違点があった。情報収集、専門職の観点で分析、評価、判断、介入計画の過程は共通しているが、「専門職の観点」が、職種が行う推論の違いとなる。その基盤には専門職倫理の原則である職業倫理がある。また、臨床推論の中で診断的推論(Diagnostic reasoning)、ナラティブ推論(Narrative reasoning)、手続き的推論(Procedural reasoning)、実用的推論(Pragmatic reasoning)の概念もあり、臨床推論が多面的な推論の統合体であると仮定され、各推論が実践のどの段階で起こるのか、各推論の重みづけを評価する尺度構成を見出すことができた。 次に、倫理推論は目的あげ、目的の背景にある問題に関する問いを立て、情報を収集し、概念を統合し、推論し、仮設を立て、予測される結果を出し、見解を統合するという思考プロセスである。そして、このプロセスにおいて、倫理理論にある原則、公正さ(Justice)、功利性(Utilitarianism)、責務(Responsibility)、徳性(Virtue)、自由(Libertarianism)、共感(Empathy)、権威性(Legitimate Authority)、権利(Human Rights)の倫理原則から状況を問い、分析し比較考量を基に判断し、判断後の善さ、正しさを省察することである。その概念の習得度を評価することが必要となる。臨床倫理推論の尺度開発のため、先述の構成を考慮し、事例から臨床推論と、臨床倫理推論の判断とその理由、推論を抽出する半構造化質問紙の作成を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床推論、倫理推論について研究論文を検索したが、理論的枠組みの不明瞭さがあり、国内外の書籍を対象とした。国内では昨今、臨床推論に関する書籍が職種ごと、専門領域ごとに多く出版されている。例えば、医学の分野での推論はProblem based LearningやEvidenced based Medicineを基盤に診断と治療の判断機序である。一方看護師は伝統的な看護過程と専門・認定看護師教育に医学的判断の要素が組み込まれている。加えて、リハビリ職については、欧米で臨床推論を考慮した教育カリキュラムが検討されており、様々な書籍、教育で取り扱われている枠組みについてレビューすることが必要となったため、概念の抽出、類似点、相違点の比較検討、構成が遅れた。医療従事者の判断の理由の基盤には、専門職倫理が影響しうると考え、倫理綱領の比較も行った。 また、倫理推論は、いくつかの大学で教育されており、その資料を入手しており、現在も継続中である。また、倫理推論のアセスメントスコア表が欧米で開発されている。それらも現在、収集している。そして、臨床倫理推論のためのツールとしてこれまで臨床倫理検討シート等、多数開発されている。これらと臨床推論、倫理推論の枠組みとの比較検討に時間を要した。そして、推論を評価するための客観的指標はどのような項目とするのかについても検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度の文献レビューの結果から、臨床倫理推論を評価するツールの作成を行う。評価ツールの開発のために、臨床推論の思考プロセスの中で診断的、ナラティブ、手続き、実用推論や、職種の情報の重みづけ、査定・評価するときの比較考量と優先性を行っている思考過程の模式図を作成し、それを反映したツールへと改良する。また、倫理推論の構成要素、職業倫理や臨床倫理で重要とされる概念や原理原則が網羅されるよう上位項目と下位項目を作成する。同時に、推論の程度として範囲や深さなどを評価できるようなツールとなるような改良を目指す。このツールを用いて、パイロットスタディを行う予定である。パイロットスタディのフィールドの確保は進めている。パイロットスタディには医療専門職を対象として、医師、看護師、その他医療職、各5-10人の協力を得る。パイロットスタディ後、共同研究者と共にツールの改良を行い、本調査の準備を行う。本調査は、医療倫理、臨床倫理、看護倫理等の教育、研修に参加する者からリクルートすることを計画している。パイロットスタディおよび本調査の研究計画は研究代表者の所属機関の倫理委員会による研究倫理審査を受ける予定である。
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Causes of Carryover |
現状としては尺度の枠組み構築のための資料は収集できたものの、資料の分析用データ化、分析が遅れている。そのため、質的データ分析ソフト、研究補助員、データ保存媒体等、購入が遅れたためである。しかし、研究補助を依頼し、分析用データ化を進めていく予定である。また、2019年度も研究補助員の雇用継続、尺度開発に向けたミーティングを共同研究者と開催する予定である。
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[Book] 医療安全2018
Author(s)
長尾式子
Total Pages
170
Publisher
メディカルビュー社
ISBN
978-4-7792-2030-2