2018 Fiscal Year Research-status Report
救急看護師が実践する共感援助モデルを適用した精神的ケアプログラムの開発
Project/Area Number |
17K12225
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上野 恭子 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (50159349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 加代 茨城キリスト教大学, 看護学部, 教授 (40382816)
長谷川 隆一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10301053)
岡本 隆寛 順天堂大学, 医療看護学部, 准教授 (60331394) [Withdrawn]
阿部 美香 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (90708992) [Withdrawn]
宇留野 由紀子 茨城キリスト教大学, 看護学部, 講師 (30734280)
長津 貴子 茨城キリスト教大学, 看護学部, 助教 (40824735)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 救急看護師 / 看護師-患者関係 / 精神的ケア / エスグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、救急部の看護師は、入院患者に対する精神的ケアをどのように考え、実施しているのかについてその実態を解明し、緊張感が持続する臨床の場で看護師らの実施可能な精神的ケアの方法を探求することを目的とした。研究デザインは、参加観察法と半構造化面接法による質的記述的研究であり、エスノグラフィーを用いた。調査対象病院は、関東圏内にある二次及び三次救急医療を担っている2か所の病院であり、その救急関連部署に所属する看護師の入院患者に対するケアや処置を行っている場面を観察対象とした。調査は、研究者所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、調査期間は2019年1月から5月下旬までとした。ここでは途中経過として、一か所の病院の分析結果を記す。 参加観察した延べ日数は8日、分析対象場面は32であった。看護師が処置を行う際、患者の意識レベルに関わらず、処置の実施前に患者に今から行う処置について手短に説明をしていた。しかし、その声掛けは一方的であり、意識清明の患者であってもケアの承諾を確認して実施することは稀であった。さらに、患者が不安そうな表情や仕草、混乱した言動があっても、それに着目することはなく、むしろ、安全に効率的に処置を終了できるように心がけ、時には患者の身体の一部を患者の意思に反して抑えて実施していた。意識レベルが低く反応が得られない患者には実施開始の声掛け後に処置がなされ、無言で手際よく実施され、終了時に終わったことを伝えていた。 看護師は、時間を気にかけて動いており、患者による抜管や点滴針の抜去、転倒などの事故防止に常に気を配っていた。電子カルテへの記録を慎重に行うことや他患者への処置との兼ね合い、他看護師との連携も気にしながら動いていた。看護師の患者への話し方は一方向であり、コミュニケーションとして成立しておらず、患者の反応を彼らの意思の表れとは捉えていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
観察対象とする病院数は、妥当性を高めるために当初より2か所以上で行うことを計画していた。現在は2か所のうち一か所の参加観察データの収集が終了している。計画では観察した看護師数名にインタビューを実施し、彼らの語りから、患者に対する思いや看護観、心情を理解し、観察データと統合して実態を把握する予定であるが、まだインタビューデータの分析までには至っていない。さらに2か所目の対象病院との打ち合わせが終わり、これから参加観察調査を実施するところである。 手法は現象学を基盤としたエスノグラフィーであるが、この手法を用いるにあたり、どの研究者も自分のバイアスをコントロールできる必要がある。また、研究者間で観察手法、記録方法を統一するために事前に観察訓練と分析方法の確認を行う必要があった。このことは当初より想定したことであり、平成30年度前半をそれに当てて計画していたが、各研究者所属の大学業務との兼ね合いがあり、思いのほか時間を要した。 さらに、研究代表者が所属する大学の研究倫理審査委員会で平成30年度研究について申請し6月に承認を受けたものの、その後、分担者所属の大学機関の研究倫理審査委員会においても審査を受けねばならないことが判明し、再度申請して8月末に承認が得られた。結局、すべての倫理審査委員会からの承認を得るまでに4ヵ月以上を費やした。承認後から各対象病院への交渉を行ったため調査開始時期が大幅に遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更はない。 平成30年度の調査は、本研究の根幹となり得る重要な知見を得るものである。そのため、2019年度前半までこの調査を計画通り実施する。5月時期は2番目の病院での参加観察、看護師へのインタビューを終わらせ、インタビュー内容は業者に逐語録作成を委託する。 研究者らの大学業務が比較的軽くなる8、9月時期に2か所の病院での調査結果を統合して分析し、研究者間でのディスカッションを繰り返し、救急部署内での看護師が実施可能な精神的ケアのタイミングや場、方法を検討する。ディスカッションにあたり、平成29年度成果を踏まえて、救急看護師の精神的ケアプログラムを創出する。案が統一しきれない場合は、プレテストを検討する。このディスカッションを行うにあたり、新たに救急(急性期)看護を専門とするものを加え実施可能性を高め、具体的な方法を立案することを目指す。 2020年度には、立案した方法の介入あるいは検証研究を実施するため、2020年1月ころから研究代表者および分担者所属機関の倫理審査委員会で申請をする。
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Causes of Carryover |
平成31年度(2019)の交付内定額は500,000円である。 本研究の最終目的は、研究代表者が開発を行ってきた共感援助尺度を用いて精神的ケアプログラムの成果を確認する計画である。次年度はまず、その完成した尺度について、2019年7月のカナダでの国際学会で発表する予定であり、次年度使用額をその旅費として充てる予定である。 次年度交付内定額は、予定通り参加観察等の調査費、逐語録の費用や国内学会旅費とする。
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Research Products
(3 results)