2017 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎患者が治癒するときの「身体性の変化」を支える方法の開発
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17K12236
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
藤原 由子 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (70549138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野並 葉子 神戸女子大学, 看護学部, 教授 (20254469)
元木 絵美 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (70382265)
奥井 早月 神戸女子大学, 看護学部, 助教 (00783002)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アトピー皮膚炎 / 身体性 / 慢性病 / 看護学 / 解釈学的現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は文献検討と並行して、先行研究を本研究につなげることができるための整理を行った。本研究の中心的なテーマとなるアトピー性皮膚炎患者が長期に症状を抱えてきた身体性についての解釈的な考え方を洗練させた。その結果、アトピー性皮膚炎患者が長期に症状を抱えてきた身体性について、14の項目を挙げて説明できるようにした。 1)身体の内から発生した痒みや皮疹が身体上に広がる、2)痒い、痛い、脹れているということを何とかしないと、という気持ちを自分へ押し付ける、3)不快感に我慢し耐えることが治療をしている実感になる、4)皮膚が痛くて身動きできない、5)症状に動きが出ないよう、身体の内に閉じ込める、6)痒みは止められないため、感覚する意識を鈍らせる、7)身から剥がれた皮膚が皮(かわ)となり、生活の跡に残る、8)皮膚病変を覆い、身体表面を曇らせる、9)本来の肌が失われ、現在の自身の皮膚が認識されない、10)自分の肌に初めて出会う、11)硬くて厚い皮膚が身体上に固定する、12)症状の不快さや煩わしさが機嫌の悪さとして根付く、13)不快や異常のあるまま、人に近付くことができない、14)他人の視線の中に自身が入る、となった。アトピー性皮膚炎患者は、上記の14パターンの内容を個別的に濃淡がある中を体験しており、患者固有の共通する意味(common meaning)に該当する仮説が成り立った。 一方で、アトピー性皮膚炎患者が長期に症状を抱えている身体性とは、「固まる」という新たなパラダイムがあることが想定された。治癒するときに変化する身体性とは、生理的な皮膚においては「硬くなる」、「厚くなる」という現れ方をし、患者の習慣や気分においては「定着する」、「根付く」となった。病気が固定するというあり方で「安定化」したり、うつる病気ではないという「固まり方」、病を「公にする」という社会的な固まり方もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は研究の第一段階として、個々のアトピー性皮膚炎患者の身体性を明らかにすることを目的としていた。当初の計画では患者にインタビューしたデータを分析することによって身体性を明らかにすることを目的としていたが、先行研究および文献を再度検討し、インタビューを開始する前にある程度の知見を得ておくこととした点が当初の計画と大きく違っている点である。 文献検討、先行研究を洗練したうえで、研究の第二段階へ進むための方法として明らかになったのは、病いの体験のどこに焦点を当てていくのかである。アトピー性皮膚炎患者が長年にわたって症状を持つことによる身体性に関わる(1)家族や医療者などの他者との関係性をどのように作ってきたのか、(2)日常生活における皮膚病変の現れ方としての出来事、(3)炎症と痒みにつきまとう不快さを実践すること、の3つについて焦点化してデータを分析することで、患者の固定している身体性を明らかにできることが分かった。その固定した患者の身体性が変化すること、固まっていた身体性をどのように動かすことで治癒が成立するのか、を明らかにする第二段階へと進む準備を整えることができた。 上記の3つの視点でアトピー性皮膚炎患者の病いの体験を捉え、研究実績の概要で述べた身体性に関わるテーマとなる14の項目、さらに「固まる」というパラダイムをもとに研究を進めていく基盤が出来上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年は洗練させた仮説をもとに研究のデータ収集を開始する。研究倫理審査の準備を整え、所属機関および研究施設に提出する研究計画書や資料を完成させる。データ収集には当初から2年かけることを予定しており、平成30年度は、少なくとも5人以上の対象データを集めることをことを目的とする。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、研究の第一段階である個々のアトピー性皮膚炎患者の身体性を明らかにする方法をインタビューで行うのではなく、文献検討と先行研究の洗練をすることで行った。データ収集としてのインタビューを開始していないため、旅費を次年度に繰り越すこととなった。また分析データ整理のための謝金、人件費等は予定通り支出せず、次年度に繰り越すこととなった。 平成30年度は、第二段階の「アトピー性皮膚炎患者の身体性が治療によってどのように変化したのか」について、インタビューで明らかにするため、データ収集のための旅費、対象者への謝金、分析データを整理するための費用、音声データおよび文字データを安全に保存するための保存用メディアなどが必要となる。
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[Presentation] 糖尿病患者へのエンボディメントケアプロトコールによる介入の効果検証 Effectiveness Researchの経過報告2017
Author(s)
佐佐木 智絵, 米田 昭子, 上野 聡子, 藤原 由子, 馬場 敦子, 魚里 明子, 河田 照絵, 曽根 晶子, 伊波 早苗, 添田 百合子, 片岡 千明, 野並 葉子
Organizer
第22回 日本糖尿病教育・看護学会
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