2018 Fiscal Year Research-status Report
小児領域の看護師による倫理的実践の構造と教育プログラムの開発
Project/Area Number |
17K12391
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
来生 奈巳子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 国立看護大学校 (30316054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡光 基子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (20285448)
矢郷 哲志 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (00778243)
大久保 功子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (20194102)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小児看護 / 倫理的課題 / 入院している子ども / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、入院している子どもに関する倫理的課題と、それに対して看護師が子どもとどのように関わっているのかを明らかにすることを目的としており、2018年度は、2017年度に実施した質的研究の分析をさらに深め、結果をまとめた。 分析の結果、昨年度の結果はさらに深刻な倫理的課題であることがわかった。病棟という閉鎖的な空間の中では大人の医療者や家族と子どもの患者という絶対的な権力構造があり、弱い立場である子どもは「規則や制限による不条理」と「治療や処置の暴力性」に晒されていたことが明らかとなった。その一方、子どもは不条理や暴力性に抵抗する力を持っており、看護師は、このような状況の中で子どもを一人の人 間として尊重するために、子ども側に立ち、医療者や家族が子どもの力を正当に評価できるよう働きかけていた。 また、研究に参加した看護師は、倫理的課題を自ら解決するために行動した者と、課題に気づいてはいるが解決するための行動には至っていない者がいた。これには、看護師自身の経験年数や組織メンバーとの交渉力の他に病棟で関わっている医師や看護管理者などの権威、病院組織の文化などが影響していると考えられた。 本研究の結果、入院している子どもが医療者や家族から多くの理不尽な対応をされていた。病院の規則は時に患者のためではなく医療者の都合となっていることがあり、家族の存在が必須で成人とは違う生活環境が必要な子どもの患者には不利益となることが多い。そのため、看護師は発達段階や個々の状況に合わせて規則を緩和したり変更したりする必要がある。また、子どもの力を正当に評価していない場合、子どもにとっては医療が暴力となりうることを医療者が認識し、真に子どもを一人の人間として尊重する医療、看護を提供することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に量的研究を実施する予定であったが、質的研究の結果をさらに深く分析する必要が生じたため、量的研究は2019年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、量的研究により質的研究の結果を検証し、入院している子どもの倫理的課題に対する看護師への教育プログラムの開発と普及を行う。
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Causes of Carryover |
量的研究の実施時期を2019年度に変更したため。
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