2017 Fiscal Year Research-status Report
地域の生活文化を基盤にした高齢者ケアの創出のプロセス評価
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17K12412
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Research Institution | Okinawa Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
大湾 明美 沖縄県立看護大学, 保健看護学研究科, 教授 (80185404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 美和子 沖縄県立看護大学, 保健看護学研究科, 名誉教授 (10070682)
石垣 和子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (80073089)
田場 由紀 沖縄県立看護大学, 看護学部, 准教授 (30549027)
山口 初代 沖縄県立看護大学, 看護学部, 助教 (70647007)
佐久川 政吉 名桜大学, 健康科学部, 教授 (80326503)
砂川 ゆかり 沖縄県立看護大学, 看護学部, 助手 (00588824)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者ケア / 生活文化 / 小離島 / 住民の主体性 / 相互扶助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医療と介護の脆弱な地域(小離島)での地域包括ケアシステム構築には、これまでの研究成果から地域の生活文化を基盤に住民の主体性(「自助」)の発揮と相互扶助(「互助」)の活性化であることを前提としている。 平成29年度は、4地域の生活文化と高齢者ケアの事例を収集した。A島は、高齢者のニーズを中心に据え、伝統行事や地域共同体の持つつながりを活かして、高齢者ケアを創り、つながりに磨きをかけ、地域の高齢者ケア力を高めていた。具体例には、①島内に介護施設がなく島外に施設入所した要介護高齢者の「生まれ島の祭をみたい」ニーズから、専門職と住民の協働により「ふるさと訪問」を実施し、島の人々との途切れたつながりを創っていた。その継続として、島の高齢者たち(要介護高齢者を含む)が、重介護で島に戻れない要介護高齢者の入所施設(島外)に訪問し、島の歌を披露し一緒に歌い語る「逆ふるさと訪問」として慰問活動に発展させていた。②認知症サポーター養成は、狭小性、環海性、孤立性を強みとし、「島丸ごと」をキーワードに全島民がサポーターとなるべく幼稚園児、小中学生、高齢者など対象に合わせて生活文化を題材にし、活動を展開していた。③高齢者の看取りでは、専門職は在宅での看取りに反対する家族と何度も話し合いを持ち、「人生の最期は生まれ島で」のニーズに寄り添う実践をしていた。そして、住民は、火葬場のない島で「死人は島外に出さないので、島で死ぬと土葬となりつらい洗骨の儀式を余儀なくされる」という風習から脱却し、「島で死んでも島外で火葬して島に迎える」新たな看取りの生活文化を創造していた。 以上の実践を研究者会議で共有し、A島を研究フィールドとし、A島の高齢者ケアの創出のプロセスを生活文化の視点から具体的に聞き取り評価することを方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成できる研究フィールドを決定するために、島嶼保健看護や高齢者の教育、研究や地域貢献で、これまで関与してきた4島を候補とし、以下の視点で検討した。①地域の生活文化が特徴的に残っているか? ②高齢者ケアは生活文化の影響を受けているか?地域に生活文化を基盤とした高齢者ケアの実践はあるか? ③研究者と地域の住民、そこで暮らす専門職、行政が協働して生活文化を活かした新たな高齢者ケアの創出は可能か? ④カウンターパートナーは確保できるか? であった。 ①は、4島のこれまでの介入研究の蓄積データから生活文化を取り出した。いずれの島も、生活文化の違いはあるが、色濃く残っていることを確認した。②は、生活文化の影響を受けている高齢者ケアについて、前述のA島の具体例のように島ごとに取りだした。いずれの島にも生活文化の影響を受けている高齢者ケアがあることを確認した。③は、島ごとに住民、専門職、行政の協働メンバーの重みづけは異なるが、これまでの実績から生活文化を基盤とした新たな高齢者ケアの創出は可能であると判断した。④は、島との協働のカウンターパートナー候補者をこれまでの関わりから具体的にイメージしたら、看護職、福祉職、地域の住民代表が挙がった。 以上の検討から、A島は、生活文化を基盤とした高齢者ケアの実践を複数持っていること、研究者と科研「小離島における行政保健師と診療所看護師との協働・連携モデルの開発」(課題番号26463536 平成26年度~28年度)の研究協力者として活動してきた経緯があることでカウンターパートナーとして研究の推進が特に期待できることから、A島を研究フィールド候補とした。方針として、生活文化を基盤とした高齢者ケアの実践が多く存在していることから、新たな高齢者ケアの創出のみでなく、実在する高齢者ケアも含め、プロセス評価を行うこととした。概ね計画通りに進捗してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、地域の生活文化を基盤に住民の主体性の発揮と相互扶助の活性化を手がかりとして高齢者ケアの創出を試み、そのプロセス評価を行うことにより、医療と介護の脆弱な地域でその地域の実情に応じた地域包括ケアシステム構築のための知見を得ることである。 平成29年度は、「研究フィールドの生活文化に関する情報の整理と面接調査による介入方針の決定および高齢者ケア創出支援」であり、概ね計画通り実施してきた。生活文化を基盤とした高齢者ケアの実践が複数存在することが確認できたため、実在する高齢者ケアも含めてプロセス評価を行う方針が決定した。 平成30年度は、予定した計画では「高齢者ケアの創出支援の継続と点検、および創出プロセスの評価」であった。生活文化を基盤とした実在する高齢者ケアのプロセス評価を加え、新たな高齢者ケアの創出支援とそのプロセス評価を行う。そのためには、研究フィールドにするため住民、専門職、行政の同意、カウンターパートナーの研究協力の同意などの手続きを得て、具体的なアクションを開始する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、「研究フィールドの生活文化に関する情報の整理と面接調査による介入方針の決定および高齢者ケア創出支援」であり、悪天候による船の欠航などによりスカイプを用いた遠隔でのテレビ会議を行うことで計画していた旅費を使用することが無かった。 平成30年度は、「高齢者ケアの創出支援の継続と点検、および創出プロセスの評価」であり、A島への旅費、研究成果報告や情報収集の学会参加のための旅費として使用予定である。
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