2018 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待予防に繋がる保健師の記録様式標準化と記録に関する教育プログラム開発・評価
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17K12590
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
柳澤 尚代 弘前学院大学, 看護学部, 教授 (10310369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 京子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (40272851)
吉本 照子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (40294988)
清水 洋子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (90288069)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保健師記録 / 思考過程 / 仕組みづくり / 情報共有 / 質保証 / 標準化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)記録様式の有効性を評価するための指標の開発を目指し、平成29年度に記録研修会の依頼のあった自治体の保健師を対象に「所属組織の組織対応、情報開示、記録作成の実態」について、アンケート調査を実施し、217枚を回収した。その結果、組織体制については、包括的記録マニュアル有9.1%、記録供覧有83.6%、記録管理体制は、職場96.3%、個人4.1%、管理責任者有38.4%、保管場所鍵有46.6%であった。記録媒体は、記録紙60.7%、電子カルテ6.4%、混合30.6%、記録様式は横罫線用紙65.3%、PDS様式19.2%、その他20.1%を使用していた。調査対象者が、研修希望の自治体職員であることを踏まえると、全国の実態はさらに低下傾向にあることが推察された。これらの調査結果より、家庭訪問等の記録様式・供覧システム・マニュアルなど、関係者間の情報共有の仕組みが未整備であり、研修で得た基本的知識をもとにした記録の実践知の共有等が課題であることが明らかになった。 2)公衆衛生看護学会にて、研究成果を踏まえ「研究成果を時代が求める保健師記録の仕組みづくり!“誰もが質の高い記録を書ける”ことを目指した職場の仕組みづくりを考えてみませんか!」のテーマで、ワークショップを開催した。集会の目的は、「研究成果の公表」と、「保健師記録への関心を高めること」、「誰もが質の高い記録を書くことができるための職場の仕組みづくりを検討する」ことであった。記録改善に取り組んできた愛知県が、「どのような考えで、保健師記録の研修計画を立て、市町村支援を行っているか。」について報告をした。集会では、「相談記録の保存期間」「記録に関する基本的事項の合意形成」「情報開示と公的責任」「スキルの定義と評価」「記録の決裁」などについての質疑応答があった。現場の保健師、保健師教育の関係者、出版社など46名が参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)平成30年度は、新たに「アクションリサーチによる記録様式及び現任教育プログラムの開発と評価」の研究計画書が所属機関の倫理委員会にて承認された。思考過程を表す記録様式の開発は、保健師活動の質の向上をはかるうえで重要である。今後、PDS様式の使用実態と課題についてまとめ、フィールド調査にて新たな様式を検討したい。 2)アクションリサーチによるフィールド調査の進捗状況 2018年7月に、武蔵野市にて保健師記録に関する基本的な考え方および書き方を中心とした研修会を開催し、7ケ月後に研修会で学んだことを振り返るセカンド研修会を実施した。ねらいは、「(1)外部支援者を活用しながら、現在の記録事例をもとに、個人・組織として、どのように相互支援し主体的に改善するか。(2)内部研修(知識の更新、学び直し、活用のスキル開発のための事例検討法)を自らできるようにするには、どうしたらよいのか。(3)システム化(記録様式をどのように改善するか、質保証の視点の共有方法・主任の支援・指導方法等)を自ら推進するにはどうしたらよいのか。」であり、今後の活動を考える手がかりを得る目的で行った。 3)セカンド研修会のプログラム開発 教育プログラムは、「(1)主催者側からの学習ニーズに関する説明、(2)プログラムの考え方、ねらい、構成について説明した。(3)自己評価(振り返り)のポイントの考え方と項目を説明した。(4)自己評価(振り返り)の演習を実施した。主催者である保健師が作成した支援記録の自己評価(振り返り)とその理由、および課題を説明した。(5)グループ討議を階層別に実施した。自己評価を通した気づき、今後の地震と組織の取り組み関する課題などの気づきを述べる。(6)全体討議:学びの共有、今後の対応を多面的に引き出す。(7)まとめ:主催者が記録の改善の進め方と期待を述べ、総括する。」から構成し、実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)今後の研究の推進方策 フィールド予定地域である台東区は、2017年度より3回にわたり研究者チームと担当者および管理者との話し合いを持ち、記録を改善する取り組みへの意思を確認してきた。さらに、区内の職場ごとに記録改善の意思があるかどうかを話し合い、保健師間での合意を図ってきた。しかし、今後の取り組みの意思は表明しているものの、未だ研修会は開催されていない。今後、新担当者と話し合いをかさねる中で、研修会のねらいおよび開催日時、研修内容を検討していく予定である。主に、知識と記録の書き方の習得を目的とした第1回目の研修会、その後の職場での実践、さらには振り返りを行うためのセカンド研修会などを通して、母子保健活動の支援記録に関する人材育成の教育プログラムの開発と、その効果を検証していきたい。 2)教育プログラムの開発と評価 現場保健師の主体的な参加の下で、多職種連携に寄与できる「教育プログラム」の検討を2017~2018年度にかけて武蔵野市で行ってきた。こうした実践知を台東区での教育プログラムに反映することで、より洗練されたプログラムになると考える。今後、2地区のフィールドに起きてくる、保健師記録に関する様々な出来事に焦点を当て、そこに潜む問題状況(課題)に向けた解決策を現場の保健師と共に探り、状況が変化することを目指していきたい。今後は、定期的に「記録様式の使用状況」,「有効性」,「妥当性」,「適用可能性」に関する情報を把握し、考察したい。とりわけ、現場の保健師と共に記録様式を開発し、検証することで、仮説の真偽を確かめることが可能となる。具体的には、保健師の知識・態度・行動に関する変化をアンケート調査にて把握することや、参与観察を受けた保健師が記載した母子保健記録を保健師の思考と行為の一連のプロセスに沿い、かつ的確にアセスメントできているかなどを評価することに取り組みたい。
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Causes of Carryover |
1)現在までの研究全体の進捗状況は、「やや遅れている」と考えている。その理由として、今後開始される予定の台東区でのフィールド活動と、武蔵野市における新たな調査が残されていること、さらには研究者の職場が青森県・東京都・千葉県・山形県にあることから、研究会の機会も少なく、議論の場の確保が困難であることが挙げられている。 2)使用計画 2019年度は、武蔵野市と台東区の2つのフィールドでの実践を並行して行う予定である。そのため、研究費は29年度及び30年度以上に、使用が見込まれている。また、科学研究費助成事業の最終年度となっているため、学会での発表、論文の投稿を準備したいと考えている。
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Research Products
(3 results)