2018 Fiscal Year Research-status Report
Establishment and Deepening the Concept of "Disaster Culture" as a key to the door to mitigate disaster damages
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17K12609
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 友子 岩手大学, 教育学部, 名誉教授 (00322959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
主濱 祐二 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (20547715) [Withdrawn]
Hall James 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80361038)
境野 直樹 岩手大学, 教育学部, 教授 (90187005)
西館 数芽 岩手大学, 理工学部, 教授 (90250638)
熊谷 誠 岩手大学, 地域防災研究センター, 特任助教 (30839733)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 災害文化 / 減災 / 地域 / 脆弱性 vulnerability / 復活力 resilience / 教育 / 自然観 / トータルな視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害文化というタームを社会に定着させるために、災害文化研究会を、研究者・被災地域で教育実践から復興を進めている方・行政部門で奮闘されている方・市井の市民活動や文化活動を展開させている方・メディア関係者に参加をお願いし、持続的な組織とした。「災害文化研究会」第4回大会は、H30年2月14日、15日に実施。「忘れない」を基本テーマとして、様々な研究成果や新たな知見を得ることが出来た。NHKの津田喜章さんは「ふるさとは人格の一部である」として、自らの放映する態度を明示された。津波を「忘れない、引きずらない」は被災地の中学生が発した言葉である。地域の活きた歴史の中に災害を刻印し復活する力(resilience)を見ることができた。異常な自然営力を素因に災害に転じる上で、地域が持つ脆弱性が明らかになる。さらに復旧・復興過程で、コミュニティが壊されてしまう経験は少なくない。災害文化という概念を、トータルに災害をとらえる基本軸に位置づけた。研究会の成果は『災害文化研究第3号』として公表した。また、海外での研究発表も実施した。American Association of Geographersの年次大会(於ワシントンDC)では、Disaster Culture というタームを前面に出した発表を行い、「災害先進国」での研究成果を具体的に示すことが出来た。文化は「危機に直面する技術」であり、災害時(瞬時から、復興期にかけての長い時間まで)、多様な文化が生まれている事実から、新たな減災の路がうまれることも確信できた。災害研究では、人文・社会科学の知見の進化は、自然科学に比して遅れがちである。その結果、横断的・総合的視座にかけることになる。日本という地域が災害の危機に直面し続けているのだから、災害文化という視座を明示し、それを社会に定着させる研究と実践を展開することは的を射ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
災害文化という概念を定着させるために、多様な側面からアプローチを試みた。表現(者)活動からはフォトジャナリストの現場に学ぶ声と眼を、NHKのキャスターからは「ふるさとは人格の一部」という復興で忘れてはならない視点を提示された。被災した中学校の創作劇から方言の豊かさと地域の結びつきをと、復活力のもととなるものが見いだされた。 津波災害の犠牲者が高齢者に集中する実態とその背景という脆弱性に関わる知見、そして最も犠牲が少なかった年齢構成を分析する中で、教育の力に注目した。中学校の被災現場を検証することで、被災の瞬時に新たな文化(自助から、公助、共助に裏打ちされた自助の創出)が生まれ復活する力のもととなっていることを確認した。この「弱い他者をたすけることで、自らも救う」という実践が危機の中で生まれたことを明示できたことは研究の前進だった。この視点で水害を捉え直した。岩泉を襲った台風(平成28年8月)では300の「限界集落」が孤立状態に陥ったが、犠牲者は2名に止まっている。高齢施設と山間の限界集落での災害リスクは、一般に後者が高いと考えられがちであるが、山間僻地の住民の相互扶助、それぞれが持つ地域の自然的特性への適応力は犠牲を最小にする大きな力になっていたことが分かった。 生涯学習も含め教育の持つ力は大きい。しかし学校教育は統廃合で再編される状況にある。今まで培ってきた地域の学習、地域が持つリスクの学習ができなくなったとき、もっと大きなリスクが生まれることは言うまでもない。学校の統廃合をこの面で捉え直すことは、近々大きな課題になる。また、人口減少に結びつく地域の産業の衰退、特に一次産業の実態分析と可能性の提示は極めて重要である。特に津波被災地は漁業を生業とする集落が大多数である。被災を契機に、地域社会の絆を強め、新しい漁業を展開する事例から学ぶことも大きな課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年に当たる。第一の課題は「災害文化」の定着と社会での伝播である。災害文化研究会を創設したが、これを全国規模に展開する。それには「災害文化」という概念の精緻で弾力性に富む適応力が問われる。「災害先進国」は災害文化研究の先進国になる可能性を秘めている。減災する力がそこに込められており、実践と深く結びついた概念でもある。3.11はこの研究の原点である。なぜ多くの高齢者が犠牲にならなければならなかったのか。日本という地域社会が持つ弱点が一気に顕在化している。急速に成長を遂げた国はいずれも高齢化問題に直面する。地球規模の災害が起こることも想定される。弱者を救うことが出来れば、おのずともっと多くの命を救うことにつながる。3.11で最も犠牲が少なかった年齢層(10歳から14歳)分析にその鍵はある。第二の課題はここにある。災害学習を集団訓練に留めることなく、地域のリスクを知り、安全確保の研究と学習を進めることが必要である。地域間・学校間の相互交流は不可欠の課題となる。災害文化研究会活動が研究と交流の深化につながること、その発展の知見を明確にすること。交流実践に止まらず、発展を深める研究に力を注がねばならない。第三の課題は、被災地域の復興である。福島の厳しさはいうまでもないが、岩手、宮城の沿岸部の被災地を覆う衰退の嵐を克服する筋道を具体例で示したい。「人はひとなか」をスローガンにした重茂漁協の成果を明らかにする。採る漁業から造る漁業へ、さらに流通をふくめた交流する漁業へ。僻地といわれる重茂半島が、実は先進漁業の実践地であることを明示したい。これは地域資源を如何に活かすかを問うことになる。災害は地域が持つ脆弱性の顕在化した姿である。一方でその克服によって有利な、あるいは他の地域とは異なる特色を持つことにつながることも少なくない。この可能性を追求することを第三の課題としたい。
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Causes of Carryover |
災害文化研究会の開催地を当初東京と計画していたが、盛岡で実施することとなったため、旅費及び会場費が大幅に減少した。次年度の開催地を岩手大学以外でも開催するよう検討している。
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Research Products
(14 results)