2017 Fiscal Year Research-status Report
多重被災からの復興と地方創生のための地域キャリア教育プログラムの開発
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17K12630
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
河村 信治 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80331958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 康 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (00251348)
玉川 英則 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10171886)
市古 太郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10318355)
永田 素彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60271706)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 震災復興 / 被災コミュニティ / シャレットワークショップ / 野田村 / ネパール地震 / ランタン村 |
Outline of Annual Research Achievements |
①野田村CWSを実施し、成果がまとめられた。 平成29年4月より首都大学東京および工学院大学のまちづくり研究室チームと合同で準備を進め、8月10~13日に野田村CWS合宿を実施した。学生14名(首都大学東京5名、工学院大学4名、八戸高専4名、京都大学1名)、および各大学・高専からの教員スタッフ4名が参加。学生は野田村の農家と漁家に分かれて民泊し、村の生活や地域活動(祭の準備)の手伝い体験や、復興事業の一環である山ぶどう栽培と山ぶどうワイン製造、みちのく潮風トレイルの整備等についてヒアリング調査や見学、体験を行い、産業振興の方策や担い手育成等の検討課題を持ち帰った。11月7日に首都大学東京にて合同のフォローアップゼミを開催し、「山ぶどうワインづくりとその担い手」(農業班)と「トレイル観光」をテーマに提案をまとめ、平成30年2月23日に、野田村CWS2017の成果報告会を実施した。 ②ネパール山間被災地における復興プロセス調査を実施した。 平成29年10月20日~11月4日に河村がネパールを訪ね、2015年のネパール地震により発生した氷河・岩屑雪崩で甚大な被害のあったネパール中北部ラスワ郡ランタン村を訪問し、震災2年半後の復興過程の現地視察とヒアリング調査を実施した。ランタン村では、海外NGOの支援を受けながら、コミュニティと伝統的産業(牧畜)の持続可能性に配慮しつつ民主的プロセスで復興が図られており、地方復興のモデルになり得る状況を確認した。 ③調査成果を日本都市計画学会東北支部および米・デラウエア大学DRC(Disaster Research Center:災害研究センター)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究は、ほぼ年度当初の計画どおりに実行された。 ①野田村CWSと野田村職員グループとの交流実践が進化している。野田村CWSは当研究チームが主催し震災後毎年開催を重ねてきたボランタリーな活動であるが、村の後援を得、村長・副村長、特定課題対策課(復興事業、地方創生総合戦略担当)、総務課、産業振興課等との信頼関係が深められてきた。プログラム実施に際して便宜を図っていただくほか、平成30年2月23日には村の公的な地方創生総合戦略会議に、CWSグループの学生と教員が村外者でありながら陪席を認められ、それに引き続きさらに庁内の総合戦略ワーキングメンバーとの合同ワークショップを実施できた。また商工会青年部や民泊事業を展開する地元NPO、民泊先の農家・漁業家との信頼関係も醸成されてきた。 ②比較対象地域としてのネパール・ランタン村はヒマラヤ山中の標高3400~3800mの高所にあり、自動車で到達できる山麓(標高1400m)から徒歩約3日間の行程である。現地調査初年度として、まず過去にヒマラヤ山域での自然地理学調査経験のある河村が地元ガイドを同行して一次調査を行い、トレイルと現地の状況を確認し、現地のキーパーソンとコンタクトできたことで、今後の調査計画を具体的に立てやすくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
①平成30年度も野田村CWSを継続実施し、地域貢献と学生教育目的のバランスを取りながらプログラムをさらに進化させ、地域主体の復興むらづくりに寄り添っていく。これまでのCWSプログラムの中で、農漁業家への民泊交流と生業体験を続けてきているが、一次産業の後継者育成は地域復興の大きな課題であり、地域キャリア教育プログラムへの発展を試行錯誤していく。 ②ネパール・ランタン村は震災により甚大な被害を被ったが、コミュニティの維持と伝統的生業の継続に留意しつつ観光産業の振興を図り、海外からの民間支援も受けながら早期に復興を進めている様子がうかがわれた。地方復興のモデルになり得る状況として、研究分担者および野田村の観光振興(とくに環境省が整備を進める「みちのく潮風トレイル」の活用)に関わる担当者とともに10月頃ランタン村を再訪し、地域復興プロセス調査を進める。現地調査以外に、当該地域を継続的に支援する民間団体の活動を調査し、さらに今後の復興交流のきっかけとして野田村での復興交流フォーラム開催を検討する。 ③災害復興と地方再興の両方の観点から、アクションリサーチとして研究成果をまとめていく。平成30年度の成果発表の機会としては、日本グループ・ダイナミックス学会、日本建築学会、応用人類学会(国際)等を予定している。
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Causes of Carryover |
年度末(平成30年2月)に実施した野田村での発表会参加に欠員が出たため、国内旅費に余剰が生じ、一部を物品費に振り替えたが残余(3,767円)が生じた。本研究の性格上、経費の主たる内容は旅費(CWS開催のための教員・学生旅費、ネパール調査旅費、学会発表にかかる旅費)であり、平成29年度「その他」の項目に該当する支出もレンタカー代金、ガソリン代金である。一方本研究計画の企画段階(平成27~28年)では震災直後の影響もあったのか廉価であったネパールへの航空運賃が、平成29年秋には回復した観光のハイシーズンにもあたり大幅に高騰したため、海外旅費は不足した。平成30年度についても全研究経費の80%を「旅費」が占める。本年度も旅費の不足が予想されるため、繰越額(3,767円)については旅費の一部に充当する。「人件費・謝金」は復興交流フォーラム開催のためネパールからのキーパーソン招聘を想定している。「物品費」は調査記録媒体やワークショップに必要な消耗品等で4%程度を計上している。
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Research Products
(11 results)