2022 Fiscal Year Research-status Report
多重被災からの復興と地方創生のための地域キャリア教育プログラムの開発
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17K12630
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
河村 信治 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80331958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 康 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (00251348)
玉川 英則 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (10171886)
市古 太郎 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (10318355)
永田 素彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60271706)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 震災復興 / 多重被災 / 地方創生 / 地域キャリア教育 / シャレットワークショップ / フォトランゲージ / 被災写真返却活動 / サステナブルツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の甚大な津波被災地の最北部にあたる岩手県野田村において、2011年夏より毎年、現地に近い八戸高専と、東京都立大学・工学院大学・京都大学のメンバーを中心に地域の復興支援を目的とする学生シャレットワークショップ(CWS)の実施を続けてきた。継続的な地域との関わりの中で、復興段階や折々の状況に合わせ、ワークショップの形式やテーマを見直してきた。その間にも2016年および2019年の台風による同地域の被災や、2015年ネパール・ゴルカ地震の山間被災地との関わりを持ち、大都市遠隔地で、度重なる自然災害や人口流出からの復興に共通する課題に向き合ってくることができた。 野田村CWSの継続を通して、学生たちによる復興地域づくりの提案や研究のストックを積み重ねてきた。各研究室は、野田村職員、商工会青年部、農業者、漁業者ほか住民の方々との交流と信頼関係を醸成し、野田村CWS以外にも、村の復興関係事業に協力する機会も増えた。 2020~2022年度の3年間はCOVID-19禍で野田村CWSの現地合宿は実施できず、各地の大学等研究室メンバーはオンラインミーティングをもちながら、各々で野田村の震災復興に係る研究活動を継続してきた。 2022年度、八戸高専の研究室では、野田村で被災写真返却活動を続ける市民活動グループに参加して、その活動についてのアクションリサーチを実施し、さらにこれまでの野田村CWS2011~2021の成果についての整理と分析を行った。工学院の学生メンバーは、野田村住民のICTを活用した情報の取得に関して研究を行った。 2022年度末にはようやくコロナ禍が沈静化してきたなか、野田村で対面での成果報告会を実施し、本研究チーム各大学からのメンバーが野田村を訪問し、村長以下村役場職員および野田村CWSに協力いただいてきた村民の方々にこれまでの成果を報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020~2022年度はCOVID-19の影響により研究活動に大きな制約を受けることとなった。主要メンバーである都立大学、工学院大学および京都大学の学生および教員スタッフは、丸3年間近く、ごく少人数で限られた日数しか現地を訪問することができない状況が続いた。 本研究の中心的な活動である野田村シャレットワークショップ(CWS)は、東日本大震災発災後の2011年から2019年まで毎年続けてきたことで、野田村役場や商工会青年部および漁業者、農業者らとの交流・協働を醸成してきた。とくに本研究課題の期間である2017年度以降は、震災復興から、人口減少と繰り返す災害の中で、どのように持続可能な地方の地域づくりに向き合うかというテーマに民官学連携で取り組むプロセスを深化させてきたといえる。本研究課題のこれまでの成果は、主にこの分野での積み上げによる部分が大きい。また2020年度以降の研究では、地域キャリア教育の実践につながる教材づくりのプロジェクトに着手し成果を蓄積しつつある。 一方、本研究課題のもう一つの軸である2015ネパール・ゴルカ地震の山間被災地ランタン村の復興プロセス追跡調査については、2017年度の第1回調査以来実施できていない。現地訪問のためのネパール国内での移動(往復行程でバス3日+徒歩1週間)に時間を要するため、研究旅行に相応の期間を要することから日本国内の現地支援団体と本研究代表者とのスケジューリングが進まないまま2回目以降の現地訪問と交流を実施できていなかったところに、COVID-19禍によりネパールへの出入国自体がままならなくなってしまった。これにより国際的な「復興交流プログラム」については、当初の企画通りの実現は見通しが立たず、この面での研究継続は難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020~2022年度の研究活動の停滞から、さらに2023年度まで当研究期間の延長を願い出た。 1.2023年度、一連の野田村CWSのまとめとして、これまでの成果を野田村の学校や行政で地域づくりの教材として活用できるようツール化する。野田村CWSは震災後12年間にわたり地域貢献と学生教育目的のバランスを取りながらプログラムを進化させてきたが、今後は地域主体の復興むらづくりに係るプロジェクトを個別に支援していく活動に発展的にシフトさせていく。一方で2017年以降の野田村CWSの中で抽出してきた具体的な課題として、①野田村の地域復興の大きな課題である一次産業の後継者育成問題に資する取り組みとして、「地域キャリア教育をねらいとしたフォトランゲージ教材の開発」 ②2019年度に実施に着手した「野田村【写真de温故知新】プログラム」 については今後も継続・発展的に実践に取り組む。 2.ネパール・ランタン村の訪問調査の再開は現実的に厳しく、当面残念ながら断念せざるを得ない。住民主体でコミュニティと伝統的生業の維持に配慮しつつ、トレッキング観光による地域復興を進めようとしていた状況は日本の地方の復興にとっても参考にすべきところ大きく、今後も彼地からの情報発信に留意し、その動向には注目していく。 3.ネパールの山間被災地の復興との共通点を見出しつつ、展開し始めた研究テーマとして、東北地方太平洋沿岸を結ぶトレイルとサステナブルツーリズムの動向について調査研究を継続していく。 COVID-19禍が復興途上の地方に与えた影響も多重被災の一大因子ととらえ、復興プロセスのアクションリサーチとして調査研究を継続していく。
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Causes of Carryover |
本研究課題は災害被災地でのフィールドワークや現地でのワークショップの比重が大きく、研究予算に占める旅費の割合が大きい。本来の最終年度であった2020年度および延長した2021年度、2022年度は、COVID-19の影響により、本研究の中心的イベントである夏と春2回の野田村CWS合宿は中止、研究代表者によるネパール調査も実施できず、学会での研究発表もほぼオンラインでの開催となった。このため研究代表者、研究分担者ともに研究活動の停滞と、前々年度からの繰越し分を含め多額の助成金の残余を生じさせることとなり、研究課題のまとめもできない状況であったため当研究期間のさらに1年間(2023年度まで)の延長を申請した。 2023年度は基本的には野田村CWSの発展的まとめとする計画である。研究分担者は首都圏ほか遠隔地からの野田村訪問であり、公共交通の便も良くないためレンタカーなど代替交通の費用が想定される。このため研究分担者への助成金配分は国内旅費主体であることに変わりない。研究代表者の外国旅費は、対象地域としていたネパール山間地域訪問が難しいため、国内旅費へ変更する。
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Research Products
(1 results)