2019 Fiscal Year Research-status Report
Research and development mechanism of environmental protection technology
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17K12858
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 秀道 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (20731764)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生産性分析 / ICT技術 / 主観的幸福度 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究活動では、初年度に構築したデータベースの利活用を行い研究論文執筆を中心に進めている。本年度の研究実施状況とその成果を下記2点にまとめる。
1. 世界37か国を対象に人々が主観的に認知しているエネルギー費用負担、生活満足度、所得水準、健康状態に関する回答を利用して関係性を分析した。主観的視点によるアンケート回答に基づき解析された結果は、客観的な統計データを利用して解析された既存研究の結果とは異なり、地域特性や文化的要素、経済発展度合いが、人々の主観的な評価結果に強く影響していることが明らかとなった。本研究の重要な結果として、国家全体での社会福祉関連支出の増加は経済的格差を縮小する一方で、高所得国においては生活満足度や健康状態を改善するとは限らないことを明らかにした点が挙げられる。加えて低所得国においては、エネルギーインフラの普及が健康状態の改善に貢献する一方で、文化的な要素や生活習慣も重要な役割を担っていることが明らかとなった。これらの知見から、高所得でエネルギーインフラ普及が進んでいるにも関わらず、主観的な生活満足度や健康状態が低水準の国は、その水準を高める方法として低所得国の文化的な視点や生活習慣から学ぶべき点は多いと言える。本研究成果は査読付論文としてNature Sustainability誌に掲載された。
2. ICT技術の普及に伴う生産性改善に着目し、OECD加盟14か国を対象とした電力セクターにおける生産性分析を実施した。特に、ICT資本が労働集約的な産業において生産性を高めるとする先行研究が示されている中で、資本集約的な電力産業において、再生可能エネルギーを含めた分散型エネルギーの割合が高まる中で、これらを効率的に管理するためのICT技術の貢献に着目している。研究成果は国際雑誌であるEnergiesで査読付論文として公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、初年度に構築した大規模データベースの活用を行うことで、多くの研究成果を挙げることができた。本年度の主な研究成果は、査読付国際論文4編・査読付国内論文1編であり、そのうちJournal Citation Reportの収録対象となっている国際雑誌が4編であることから、多くの読者が見込まれる。一方で、予定していた企業アンケートの実施が遅れていることから、本年度の研究進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、引き続き構築したデータベースを活用し、要因分解分析による研究開発戦略の要因分解分析や、生産性分析アプローチによる生産性評価を行うことで、技術特性の異なる環境保全技術の開発行動メカニズムの分析及びその技術開発が生産性に与える影響について研究を進める。加えて、環境保全技術特許の出願行動に着目し、時系列データ分析から特許出願の構造変化が起こっている時期を分析する。構造変化が発生した前後の期間で、どのような政策や経済的影響が生じているかを考察する。
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Causes of Carryover |
育児を行う時間を多く要したことから、本研究課題を進めるための十分な研究時間を確保することが困難であった。特に研究課題で予定していた企業へのヒアリング調査で必要となる出張業務が、育児のため困難であることから実施できない状況であった。来年度は育児に関する負担が軽減される予定であり、出張業務を行う障壁が緩和されることから、上記の研究活動を行えると考える。
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Research Products
(8 results)