2018 Fiscal Year Research-status Report
マルチロータ型ヘリコプターを用いた非接触音響探査法に関する研究
Project/Area Number |
17K12991
|
Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
上地 樹 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (30766861)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 非破壊検査 / ドローン / 長距離計測 / 非接触音響探査法 / SLDV / 欠陥 / コンクリート / 音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の実験により、ドローン(MATRICE 600 Pro, DJI Co., Ltd.)を用いた非接触音響探査法において、加振用音源を搭載したドローンが飛行中に風の影響を受けて流されてしまい、計測箇所に音波が正確に当たらず、計測結果におけるノイズが増加するという傾向が確認された。そこで、ドローンに搭載されているフラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)の指向性を確認する実験を行い、ドローンが風により移動しても問題ない範囲を検討した。その結果、ドローンから計測対象までの距離を4 m程度と仮定した場合、1 m程度であれば計測位置からずれても問題ない結果となった。ただし、加振用音波の周波数により指向性は異なるため、使用音波によっては離隔距離が変化する。 これらを踏まえ、熊本県阿蘇郡南阿蘇村にある旧久木野庁舎を対象に、非接触音響探査法を行った。この時の計測は建物の2階と3階の間にあるタイル面を対象に行われたため、ドローンは8 m程飛行した状態で音響加振を行い、超高感度スキャニング振動計 (PSV-500 Xtra, Polytec GmbH)を用いて対象面の振動を計測した。その結果、実構造物においても計測対象面に存在する欠陥を検出することが可能である事が確認された。 次の実験では、外壁タイル試験体をクレーンで持ち上げコンクリート構造物の上に設置し、上記の計測状況を模擬した状態で計測を行った。この実験では、前述した実験では行わなかった加算平均を使用した場合との比較計測を行った。それらを比較した結果、加算平均を行うことで、ノイズが減少し計測結果が安定することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ドローンを用いた非接触音響探査法において、飛行中のドローンが風に流されてしまい、音波が正確に計測対象に当たらないということがあったため、搭載しているフラットスピーカ(FPS1030M3P1R, FPS Inc.)の指向性を確認したところ、1 m程度ならば中心からずれても問題ない事が確認された。ドローンの移動は計測後の信号処理に影響している。解析時の計測距離がずれていると、必要な信号を省いてしまう恐れがあるため、現状では計測距離が必要な処理は省略して解析を行っている。 実験に関しては、実構造物および試験体を対象に計測を重ねており、両対象において欠陥部の検出が可能である事が確認された。実構造物においては、試験体と比較して内部の欠陥が複雑であることや、風の影響によるドローンの移動および計測用レーザの励振が発生したためノイズが多く発生したが、欠陥部の反応も検出されたため、実構造物においても本手法は適用可能であると考えられる。試験体を対象にした実験では、加算平均を行うことによりノイズの低減を試みた。その結果、ノイズが低下して計測結果が安定することを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、実構造物および試験体を対象に実験を行い、計測中に発生する風等による計測結果への影響について検証を重ねていき、本手法の検出精度を高めていく。特に実構造物内部の欠陥は試験体の模擬欠陥に比べて複雑な構造をしているため、実用化という観点から考えると実構造物を対象にした計測を増やしていく必要がある。 また、計測中にドローンが風に流され計測位置から想定した範囲を大きく逸脱した場合、欠陥部を検出することが困難であるため、その場合の対処法を検討する。これは、ドローンが計測範囲から外れた場合、計測を一時的に止めるなどの対策が簡易的な方法として挙げられるが、ドローンの位置制御技術の向上が進めばこれらの問題は解決すると考えられる。風による影響はドローンだけではなく計測機の方にも影響してくるため、そちらの方の対策も検討していく予定である。対策方法としては、計測機周辺に壁を作成し物理的に風を遮る方法や解析時にノイズを除去するなどの方法が考えられる。
|
Causes of Carryover |
計画当初、株式会社ジツタが開発したドローン誘導システム(TSドローン)の導入を予定していたが、想定したよりもコストが掛かることが判明した。そのため計測結果の向上のためのカメラの導入や新たな受信機の取り付け、実験場所への移動を行う際のドローンの安全な運搬のための機体ケースの購入に切り替えた。この事から、想定したよりも余剰金が発生し、次年度に繰り越すことになった。 この費用については、次年度の実験における費用および備品の購入、もしくは学会発表等に使用する予定である。
|
Research Products
(13 results)