2017 Fiscal Year Research-status Report
Sophistication of screening method for drugs of abuse by surface enhanced Raman spectroscopy
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17K12994
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
瀬川 尋貴 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (80778978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SERS / 規制薬物 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、表面増強ラマン散乱(SERS)を用いた新しい規制薬物スクリーニング法の基盤を確立することを目標としている。研究初年度である平成29年度は、最適な実験条件の探索と、スペクトル解析法の検討を行った。実験条件の探索においては、近赤外領域の785 nmの励起光を用いる条件下で、形状や粒子径、構成元素の異なる複数の金属ナノ構造体を用いて、種々の規制薬物のSERSを測定した。その結果、異方性のある凝集体を溶液中で構成することが可能な金ナノ粒子分散液を用いた際に、最も広範の薬物分子のSERS信号を安定して取得可能であることを見出した。この測定系では溶液状態での安定した測定を行うことができ、露光中の強度変動や実験期間内でのナノ粒子の劣化は見られず、高い再現性でSERSスペクトルを取得できた。このナノ粒子を用いて系列希釈した覚醒剤メタンフェタミンの溶液のSERSスペクトルを測定したところ、SERS強度と薬物溶液濃度の関係が等温吸着式様の挙動を示すことを確認し、メタンフェタミン溶液の場合の検出限界は1 ppm以下になると見積もられた。また、測定した規制薬物の構造とその測定結果から、化学構造とSERS強度の相関を明らかにするための基礎的な知見を得ることができた。スペクトル解析法の検討においては、得られたSERSスペクトルの雑音除去を行う方法の開発を試みた。その結果、従来スペクトル解析に頻用される多項式フィッティングを用いる方法に比べ、生データの形状によらずフラットなベースラインを有するSERSスペクトルを取得可能な方法をプログラムに実装することができた。このことは得られたスペクトルから規制薬物の有無を正確に判定する際に重要であり、次年度以降に行うスペクトル識別法の開発の基礎となる実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画中の最適な測定条件探索については、高い増強度と汎用性、再現性および安定性を有する条件を確立できた。測定におけるパラメータとしては本年度に検討したもの以外にも変化させられるものがあるが、本年度に確立した条件が基盤となるものと推測された。ただし、一部の規制薬物については増強がほとんど確認されなかったものもあることから、測定の汎用性については慎重に検討する必要がある。スペクトル解析については、バックグラウンド信号の安定した除去は達成されたが、特に薬物のSERS強度が低い場合にナノ粒子に由来するノイズがスペクトル上に現れるため、このノイズへの対処法は今後も検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最適な実験条件の探索については、ナノ粒子の長期間安定性を評価するとともに、測定対象とする薬物のバリエーションを増やす。種々の化学構造を有する薬物分子を測定することで、系の汎用性を確認するとともに、構造-スペクトル相関を明らかにし、かつ標準SERSスペクトルライブラリを構築する足掛かりとする。また、測定データとライブラリを照合し、試料中の規制薬物含有の有無を判定する手法として、距離を用いた類似度判定のほか、多変量解析を利用した方法を検討する。
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Causes of Carryover |
物品費として計上した化合物について、一部製品にロット不良が判明したため納期未定となっており、年度内の予算執行ができなかった。次年度使用額はこの製品の納品と共に物品費として充当する予定である。
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