2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K12999
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長嶋 史明 京都大学, 防災研究所, 特定助教 (70793537)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 拡散波動場理論 / 水平上下スペクトル比 / 地盤構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず欧州の地震観測網であるEngineering Strong Motion databaseからグルノーブル盆地内外で観測された地震動を収集した。観測地震動水平上下スペクトル比や同定構造は盆地構造などの地下構造の変化を反映したものが得られた。また,盆地内の地中と地表の観測点間の地震動スペクトルの比には顕著なピークがなく一定の振幅が広い周波数帯で現れ,日本ではあまり見られない形状を示し日本と欧州の地盤条件の違いを示すものと思われる。 収集した地震動記録を用いて,我々がこれまで日本国内の観測記録を用いて開発した地盤構造同定手法を適用して先験情報のない状態での1次同定地盤構造モデルを求めた。どの同定結果も観測された地盤震動特性をよく再現するものが得られた。 地盤構造同定結果を持ってGrenoble Apls大学を訪れ現地の研究者たちと意見交換を行い,グルノーブル盆地内での微動観測記録に基づいて同定した地盤構造に関する最新の研究成果を得ることができた。我々の1次同定モデルと彼らの同定構造はその概形は一致するものの極浅部などで違いが見られ,中には概形から違う観測点も一部ながら生じた。この差の要因に関しては使用したデータの種別や適用できた周波数範囲の違いなどが考えられる。 また,日本の観測記録に基づきS波速度とP波速度,深さの関係を整理し,極浅い地盤とそれ以深でP波速度の最頻値が変化することを見出した。この観測事実に基づいて深さによって場合分けしたS波速度を変数としたP波速度の換算式を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度に地震観測記録や地盤構造に関する先験情報の収集を行い,我々が開発した地盤構造同定手法を適用し現時点での同定構造の妥当性の検討を行うこととしていた。地震観測記録は滞りなく取得することができ,地盤構造の先験情報に関してはApls大学の研究協力者から最新の知見を得ることができた。また,現時点での地盤構造同定手法の同定能力を把握することができたので,平成29年度の研究計画をおおむね実行できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の課題として,我々の同定構造と研究協力者から得た地盤構造との差異について,用いた観測データや手法の違い,盆地構造の影響などを考慮して精査することが挙げられる。また,研究協力者の地盤構造を先験情報とした場合の我々の提案する同定手法の同定能力に関しても検討を行い,先験情報の有無による同定構造および推定される地盤増幅特性への影響に関して調査する。S波速度とP波速度の関係についても平成29年度に整理したので,それを用いて現実の地盤構造の特徴をよく反映した構造を同定できるようにする。欧州の建物被害予測のための情報収集に関しても引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
論文投稿費の支払いが次年度にずれ込んだため。 繰り越した助成金は論文投稿費として使用する。
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