2018 Fiscal Year Research-status Report
火山灰による太陽光発電量の減少を利用した降灰量推定モデル開発と降灰予報モデル検証
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17K13008
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宇野 史睦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 産総研特別研究員 (60634946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 降灰 / 太陽光発電 / 桜島 / 降灰量推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の主要な項目は、火山灰降灰量推定モデルの開発と検証が主な解析である。平成29年度に設置した鹿児島県大隅半島における5つの太陽光発電施設の発電所のインターバルカメラによるモニタリングを2018年12月まで実施し、2019年1月に撤去を完了した。 また、降灰量に対する発電量の低下率評価を現地で実施するのは、上記のモニタリングデータだけでは困難であった。前年度に引き続き、現地に堆積している降灰を収集し、降灰実験を新たに実施した。公開実験は産業技術総合研究所の屋上にて、実験用モジュールを用いて降灰量と発電量低下率を評価した。その結果、複数の日射条件においてデータを収集したことにより、発電量低下率から降灰量推定式を構築できた。ここで使用した火山灰は、インターバルカメラのメンテナンス時に太陽電池モジュール上へ多量に堆積していた火山灰を利用した。 インターバルカメラによるモニタリング画像から降灰量を評価するためには、火山灰の粒径分布情報が必要となる。そこで、現地で収集した火山灰の特性を調べるため、走査型電子顕微鏡(SEM)を研究協力者の気象研究所にて実施し、粒径分布を得た。この粒径分布を元にインターバルカメラで撮影した画像を加工した。データが大量であるため、今年度は大規模な噴火事例の一部の時間のみとし、より多くの事例の整備は次年度とすることとした。また、インターバルカメラで撮影した画像は汚れも多く、利用可能な時期についても整理する必要がある。 加えて、鹿児島における太陽光発電量のデータについて、インターバルカメラによるモニタリングしている5地点に加えて、小規模な太陽光発電施設の発電量データ約300地点の品質管理・データの整備を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の実施項目は、平成29年に引き続き1、火山灰降灰量推定モデルの開発と、2、降灰予測モデルの実施である。 前年度に引き続き、鹿児島県大隅半島の5つの太陽光発電施設の発電に、設置された2つのインターバルカメラ(計10個)を3か月に一度、現地にてデータ回収と測器メンテナンスを実施し、約1年間のデータ収集を実施した。その後、2019年1月にインターバルカメラの撤去を実施し、原状復帰を行った。この1年間における桜島の噴火回数やその規模は例年と比べ少ないものの、十分なデータ量を蓄積できた。また、小規模な太陽光発電量のデータについて、時刻ずれや設置条件(角度や方位)の不備によるデータからの推定などを実施した。また太陽電池モジュールの過積載による低格容量・出力との違いの補正など、多くの品質管理が必要であった。 また前年度に引き続き、降灰量推定モデルの構築のための追加観測を実施した。前年度は太陽高度が低く、日射量・気温が低い12月のみだったため、太陽高度の高い6月も同様の実験を実施した。その結果、これまで鹿児島県霧島市で実施されてきた太陽電池モジュールと日射量の測定値から評価した降灰量と発電量低下率の関係に近い値が確認できた。しかし、12月と6月で外気温が大きく異なるため、モジュールの温度補正の必要性も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、構築した降灰量推定モデルを利用して、実際の桜島噴火事例を対象に降灰量推定を実施する。使用データは平成30年度に整備した鹿児島県の降灰量観測データ、本研究で実施したモニタリングデータから評価した降灰量、太陽光発電量データを利用する。さらに、降灰量推定のために、衛星推定日射量、気温・降水量データが必要となるため、これらについては、それそれ太陽放射コンソーシアム、メソ解析値からデータを整備する。 その後、いくつかの噴火事例を選択し、太陽光発電量データより推定降灰量分布を評価する。ただし、雨天時や強風時は推定誤差が大きくなる可能性があるため、第一には晴天時の噴火事例に着目する。推定誤差の評価には、鹿児島県の降灰量観測値と比較を実施する。これらのデータはどちらも地点データであるため、空間内挿した上で評価する。また、モニタリングデータの精度が想定より低いこと、強風時は太陽電池モジュールへ堆積した火山灰が吹き飛ばされるなどの影響がインターバルカメラより確認されたため、晴天時と強風時でどの程度推定誤差が生じるかについても、評価するなど、本研究で開発した手法の適用可能範囲についても追加調査する予定である。 この数年において桜島の降灰量観測は気象レーダーやライダー等で量的な推定が可能となってきているため、太陽光発電量から推定した降灰量との整合性評価のため、関係者と意見交換なども実施を検討している。
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Causes of Carryover |
降灰量の堆積実験を次年度から引き続き継続で実施するにあたり、研究成果の発表を次年度に持ち越すこととした。そのため、予定している国内・海外での研究成果の発表を平成31年度に実施するためその旅費について次年度に繰り越す。
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Research Products
(1 results)