2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of the swallowing rehabilitation system using tongue motion estimation by intraoral electromyography.
Project/Area Number |
17K13089
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (10781700)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | リハビリテーション / 舌 / 摂食嚥下 / 筋電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,舌の動作状況を可視化できる嚥下機能の訓練システムの開発を目指している.本年度の成果は,健常人を対象として専用のマウスピースによる歯茎上での舌動作の計測を行ったことと,舌でディスプレイ上のマウスカーソル操作ができるシステムを製作したことである. 舌の運動を計測するため,口腔内で生じる舌運動に伴う電位変化を歯茎上から記録した.歯茎上に電極を固定するため,被験者ごとに用意した特注の歯科用のマウスピース上に直径1mm程度の球型電極を取り付けた.マウスピースを用いることで被験者の舌の運動を妨げることなく計測を行うことができる. こうして記録される信号は,電極と筋肉との位置関係から主に茎突舌筋やオトガイ舌筋の活動に由来したものであると考えている.嚥下リハビリテーションにおいてよく利用されている5動作(突き出し:Sticking out,挙上:Elevation,右:Right,左:Left,静止)を対象とし,100 msごとに動作状態の判別を行うことができることを確認した.判別のため, 得られた信号から1 s ごとの周波数スペクトル密度(PSD)を求め,複数の帯域のPSDを特徴量として識別を行った.識別結果をもとに,コンピュータのディスプレイ上に示したカーソルを動かすことで被験者に対して現在の舌運動状態を示すとともに,リハビリテーションに対するモチベーション向上を図ることができた.これらの予備的な結果を日本人間工学会関西支部大会で報告し,優秀発表賞を受賞した. 今後の課題として,この時の運動能力の客観的な指標の確率が求められる.現在,被験者数を増やしたうえで,マンマシンインタフェースにおける人間の動きのモデルであるfitts 則を用いて被験者の舌運動能力の比較を行うことを検討している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の目標は以下の2点であった. 1.専用のマウスピースによる歯ぐき上での舌動作の計測:舌動作計測のために歯科用マウスピース作製を行った.違和感を減少させるため被験者ごとにマウスピースを特注する必要があるが,これらを製作するための施設提供や技術提供は鳥取大学医学部付属病院から受けた. 2.舌のみでマウス操作ができるシステムを構築:計測された信号をもとに,舌動作の識別を行う手法について検討した.舌の動作として,主に舌の突き出し動作を担うオトガイ舌筋および舌を上口蓋に押し上げるような動作を担う茎突舌筋の活動を計測した.得られた信号を周波数帯域ごとに分割し特徴量とすることで舌動作の識別が可能であることを確認し,舌動作のリアルタイム識別を行い,識別結果に応じてコンピュータのカーソルをマウスのように動かすことができるシステムを構築した.これらコンセプトについて日本人間工学会関西支部大会で発表し,優秀発表賞を受けた.さらにこの時,被験者の違いによる操作性の評価はマンマシンインタフェースにおける人間の動きのモデルであるfitts 則により行えると考えた.現在は被験者数を増加させて実験を進めるとともに,これらの結果を論文として出版すべく準備を進めている. 加えて,舌の特定の筋肉を鍛えるための装置の開発を進めた.この装置は,舌を押し上げる挙上動作に用いられる茎突舌筋を効果的に鍛えようとするものであり,モータに接続された舌圧子を利用して,舌に対して一定の押し付け力を発生させることができる.この時の動きによって,茎突舌筋に対して等張性運動を引き起こすことができたと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後,以下の4点について研究を進める. 1.臨床対応に向けたシステムの小型化・無線化:現在のシステムでは口腔外に大型の生体アンプを接続し,電位変化を記録しているが,実用上は小型化することが望ましい.電子回路のカスタム製作を行う株式会社マインズ代表大北氏の助言を得ながら,アクティブ電極により安定して口腔内電位を計測できる小型計測システムを製作する. 2.嚥下リハビリテーションに向けた舌運動の評価:口腔内の歯茎上から得られる電位変化は,舌の運動強度,特にオトガイ舌筋や茎突舌筋の運動を強く反映していると考えている.そこで,健常者に嚥下リハビリテーションに必要な運動(特に舌の運動,頬の運動,口の運動)を行わせ,その際の電位変化を記録する. 3.健常者を対象とした舌運動トレーニング:得られた電位変化をもとに,健常者を対象として,被験者に強度変化を見せ自らの運動状態をフィードバックした場合と,何もフィードバックしなかった場合の介入効果の差について評価する.この点,既に臨床のための倫理委員会の承認はおりている. 4.嚥下能力が低下している人を対象としたリハビリテーションへの適用:鳥取大学医学部次世代高度医療推進センターと連携し,実際に嚥下能力が低下している患者さんに対して本システムをリハビリテーション目的もしくは検査目的で適用できるかどうかの検証を進める.健常者での実験結果を踏まえ,安全性を確保した上で十分な効果が見込めると判断できれば実際の患者さんでの評価実験を行う.このとき多人数の実験から得られた舌運動時のデータを用いて,これまでに提案されてきた既存の摂食嚥下リハビリテーションの効果を定量的に評価する手段としての利用も検討する.
|
Causes of Carryover |
マウスピース作成に際して鳥取大学医学部付属病院の協力を得ることができたため,当初の計画よりも大幅に安価に実験装置を製作することができた.そのため,次年度使用額が生じた. 次年度以降の研究においては,電極数の増加による計測時の空間解像度向上を図る.
|
Research Products
(2 results)