2017 Fiscal Year Research-status Report
日本人の強みである謙虚さを活かした競技者における陰の側面の解決と成熟性の向上
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17K13149
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
遠藤 伸太郎 中央大学, 理工学部, 助教 (20750409)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 謙虚さ / 競技者 / 心理的成熟 / 半構造化面接 |
Outline of Annual Research Achievements |
競技スポーツに取り組む者(競技者)の方がそうでない者に比べ、生きがいをより形成しやすいことや自尊心が高いことが報告されている。しかし、競技スポーツには陰の側面も存在する。例えば、怪我やスランプのような挫折によるメンタルヘルスの悪化、アルコール依存や薬物乱用の問題、近年大きく取り上げられた賭博や暴力事件のような犯罪が指摘されている。このように競技スポーツの陰の側面は様々な社会問題を引き起こす要因となっている。そして先行研究では、これらの問題に対してストレスマネジメントや、唾液中に分泌されるストレスホルモンや免疫応答物質などの生理指標を用いたモニタリングが行われてきた。しかしながら、陰の側面を解決する抜本的な方策は示されていない。 本研究は、日本人の強みである謙虚さに注目し、競技スポーツにおける成熟性の向上に向けた提案を行う。競技水準の向上を主な目的とする競技スポーツには、生きがいの形成や自尊心の向上など光の側面がある一方、怪我やスランプなどの挫折によるメンタルヘルスの悪化、アルコール依存や薬物乱用、賭博など「陰の側面」が併存する。しかし、これらの問題を解決し、さらに個人の人生観を含めた成熟を促す効果的な提案はなされていない。そこで、特に陰の側面を抱えやすい大学生競技者を対象とし、謙虚さとの関係を明らかにする。そして、陰の側面を低減しつつ個人の成熟を促すモデルを構築し、実際の競技現場に適用する。さらに、教育の領域へ援用することで、日本独自の全く新しい競技スポーツの指導理論を検討・確立することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、すでに謙虚さを測定する尺度を開発しているが、謙虚さの測定には、他者の視点による評価も考慮に入れる必要がある。そこで、作成した謙虚さを測定する尺度の改訂を行う。具体的には、調査協力者に対して、半構造化面接によるインタビュー調査を行う。協力者は、個人及びチーム競技の国際大会で活躍した大学生競技者の指導に携わった指導者・スタッフ30名を予定している。協力者に対して、謙虚な競技者に対するイメージについて、様々な言動や思考の特徴に関して質問し、回答を依頼する。分析は、申請者が精通した手法であり、定性的に多様な情報やデータを、類似性のあるものでカテゴリー化し、新たな意味や構造を理解するKJ法を採用する。これにより、既に作成された尺度との整合性を確認し、他者の視点による評価を踏まえた謙虚さをより精緻に測定する尺度を作成する。 今年度は、協力者のインタビュー調査を行う予定でいたが、実施日の調整がうまくいかず、すべてのインタビュー調査を行うことが難しい状況にあった。しかしながら、限られた協力者へのインタビュー調査から、謙虚さを備えることが日常的なトレーニングにより他者との信頼関係を結ぶことにつながり、挫折などの陰の側面からの立ち直りやそこからの心理的成熟において有効であることが示唆された。また、競技中のパフォーマンス発揮という面においては、謙虚さを備えることがネガティブに作用することが示唆され、競技者内におい日常と競技場面を切り替えることが重要であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、残りのインタビュー調査をまず行う。次に、その結果をもとに作成した尺度の信頼性と妥当性を検証しつつモデル検証を実施する。検証は広範かつ偏りの少ないサンプルから知見を得られるインターネット調査によりデータを収集する。サンプル数は、日本統計協会によって提唱されている適切なサンプル数を算出する数式に基づき、記録向上や勝利を主な目的としている競技者400名程度を対象とする。作成した尺度の信頼性と妥当性は、Domain Sampling理論に基づいて、Cronbachのα係数、項目全体相関、探索的・確証的因子分析を用いて検証する。加えて、競技者における謙虚さの特徴を探索的に検討するため、デモグラフィックデータとして、競技種目、競技開始時期、競技レベル、身体的な強度、対象者の家庭環境についても回答を依頼し、謙虚さとの関連を検証する。研究2は、インターネット調査により行う。調査対象者は、研究1と同様に400名程度の競技者を予定している。先行研究をもとに対象者には、研究1で開発した謙虚さを測定する尺度、競技者の心理的成熟を測定する尺度、競技者用ソーシャルサポート尺度、リスクテイキング行動尺度、自己申告非行尺度への回答を依頼する。謙虚さが陰の側面の低減、個人の成熟につながるという仮説に基づいたモデルについて、変数間の関係のデータと仮説の差を量的に検証する構造方程式モデリング(SEM)による確証的検証を行う。得られた結果の中から、適合度が高く、誤差が小さい最適なモデルを採択する。
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Causes of Carryover |
次年度は、前年度予定していたWeb調査を行うため、その他の計上が発生する予定である。
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