2019 Fiscal Year Research-status Report
日本人の強みである謙虚さを活かした競技者における陰の側面の解決と成熟性の向上
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17K13149
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
遠藤 伸太郎 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (20750409)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 謙虚さ / 競技者 / インタビュー調査 / KJ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、謙虚さの測定には、他者の視点による評価も考慮に入れる必要性を考慮し、既存の謙虚さを測定する尺度の改訂に向けた基礎資料を収集した。具体的には、個人及びチーム競技の国際大会で活躍した大学生競技者またはその指導に携わった者(協力者)に対して、半構造化面接によるインタビュー調査を行った。協力者に対して、謙虚な競技者に対するイメージについて、様々な言動や思考の特徴に関して質問し、回答を依頼した。分析は、定性的に多様な情報やデータを、類似性のあるものでカテゴリー化し、新たな意味や構造を理解するKJ法を採用した。これにより、既に作成された尺度との整合性を確認し、他者の視点による評価を踏まえた、より精緻に謙虚さを測定する尺度を作成した。分析の結果、謙虚な競技者は素直であること、日々のトレーニングへの集中や対人関係を円滑にすること、挫折などの陰の側面からポジティブな側面を見出し、心理的な成長につなげていることが示唆された。しかしながら、過度な謙虚さは日常生活のストレスの増大、パフォーマンスの低下につながることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
協力者のインタビュー調査から、謙虚さは競技者において重要であることが示唆されたが、過度な謙虚さにはネガティブな側面があることが示唆された。この結果は、謙虚であればあるほどポジティブな結果が得られるわけではないことを示し、尺度作成をどのように進める必要があるか議論を要した。この点は、先行研究でも触れられていないことであるため、競技者を対象とした謙虚さの程度について自由記述調査を実施し、検討した。分析の結果、過度な謙虚さにはネガティブな側面があることが示唆されたため、尺度作成にあたり、上記の特徴を考慮した尺度項目を作成することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、インタビュー調査の結果をもとに作成した尺度の信頼性と妥当性を検証する。インターネット調査により競技者を対象にデータを収集する。尺度の信頼性と妥当性は、Domain Sampling理論に基づいて検証する。次に、競技者の謙虚さと陰の側面、心理的成熟との関連を検討する。対象となる競技者に、作成した謙虚さを測定する尺度、競技者の心理的成熟を測定する尺度、競技者用ソーシャルサポート尺度、リスクテイキング行動尺度、自己申告非行尺度への回答を依頼する。謙虚さが陰の側面の低減、個人の心理的成熟につながるという仮説に基づいたモデルについて、構造方程式モデリング(SEM)による確証的検証を行う。加えて、主観的・客観的指標に基づく各変数間の関連の縦断的検討を行い、現場への適用可能性を検証する。大学の体育連盟に所属する競技者を対象に、インターネット調査で用いた尺度を縦断的に測定し、謙虚さの程度による変数の変化を分析する。また、客観的指標として、唾液中のコルチゾール(起床時コルチゾール反応)測定を行い、それらとの関連も検討する。以上の成果に基づいて、謙虚さと各指標の関連を主観的だけでなく客観的側面からも明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
前年度予定していたインターネット調査と唾液中のコルチゾール測定を行うため、次年度使用額が発生した。
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