2018 Fiscal Year Research-status Report
カンボジア国境地域の女性移住労働者にみる社会的包摂の論理に関する研究
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17K13301
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
島崎 裕子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授(任期付) (90570086)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国境地域 / 女性 / 越境労働 / 移住コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、1)国境居住地における女性たちの社会環境分析と、2)「共同体意識」と「ネットワーク形成」に関する調査を遂行した。調査方法は、参与観察と聞き取り調査を選定し、聞き取り調査は半構造化インタビューの個別面接を採用し、聞き取り対象者は無作為抽出で実施した。フィールド調査では、居住形態、収入状況と労働形態、人間関係などの社会環境がどのように人びとに影響し、彼女たちのコミュニティを編んでいるのか聞き取り調査を実施した。これらの調査結果の相関関係を捉え、移住女性たちの社会環境分析を行った。調査は、カンボジア・バッタンバン州コムリアンの国境地域で行った。その理由として、当該地域は現在、カンボジアからタイへの越境移住労働者たちの日常的な主要国境口となっており、隣接国とのタイとカンボジアの関係や移住労働者たちの日常を捉えるのに適した場所であると考えられたためである。 調査結果からは、女性たちの国境移住地における社会環境を把握したことで、日常の空間における特徴性や、個人事情を捉えるだけでなく、集団としての類型を検証することが可能となった。また通常農村とは異なる多様な背景を抱えた女性たちによって形成されるコミュニティの共同体意識を見ると、移住先コミュニティ内において相互扶助や、地縁、さらにカンボジア人の意識として重要な意味をもつ儀礼行事(宗教行事、正月等)を共に過ごすなどしていた。その結果、通常農村とは異なる形態を持つ当該地において、人的ネットワーク、地縁ネットワークなどの存在を明らかとなった。今後も引き続き調査を深化させながら、より詳細にネットワーク形成の成り立ちや、構築方法など、多面的にその作用をみていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査計画書通りに、おおむね研究が順調に遂行している。 ただし、当初予定していたタイ・カンボジア国境のポイペト地域のコミュニティ内においては、治安上の問題により、当該年度は調査の実施には至らなかった。よって次年度において現地協力者などとも引き続き連携をしながら実施を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的をより精緻に遂行するため、さらなる現地調査の遂行を検討している。今後の研究の推進方策として、「社会的包摂モデルの構築」の論理の抽出と分析、ならびに調査を実施してきた調査対象の集落/コミュニティにて、居住者らを対象にした住民参画型のワークショップ、ならびに参与観察を実施する。それらを通じて、当事者である住民はどのようにコミュニティを認識しているのかを把握する。そして、住民らが考える「社会的包摂」のあり方を提示したい。また、国境地域特有の問題に対して自分たちはどのように対策を講じているのか、住民らのなかにみえる情報共有の方法や、意思決定のあり方なども明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたカンボジア・タイ国境地域の一つ(ポイペト国境地域)において治安上の理由から調査の遂行には至らなかったため、次年度使用額が生じた。次年度も引き続き、現地調査を中心に、現地との治安や現地協力者との連携を図りながら調査を実施していきたい。
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