2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 久美子 京都大学, 文学研究科, 准教授 (30634117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / フォークナー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フォークナーの諸作品を「教養小説」というジャンルに関連づけて考察することで、従来等閑視されていたフォークナーの小説世界における漸次的な時間の流れを詳らかにするものである。二年度にあたる本年は、初年度に引きつづき、フォークナー作品における教養小説的な時間感覚についての概念構築を行った。その成果の一部は、2018年10月にサウスイーストミズーリ州立大学のCenter for Faulkner Studiesが主催するFaulkner and Garcia Marquez Conferenceでの口頭発表としてまとめられた。これは、フォークナーの『八月の光』とガルシア・マルケスの『百年の孤独』における「フラット・キャラクター」を比較することで、決して成長しない「反-教養小説的主体」としてのフラット・キャラクターたちが、いかに小説内での漸次的時間性と折り合いをつけるのか、その過程を辿るものである。また、同年11月に開催された京大英文学会の研究発表では、後期フォークナーの代表作『行け、モーゼ』所収の短篇「黒衣の道化師」における時間の表象を精査することで、フォークナーが作家としての最盛期を経た後に示し得た、新たなる時間へのまなざしを浮き彫りにするものである。また、本研究は、フォークナーの作品における「社会的」な側面を、「時間感覚」という観点から考察するものだが、そのプロジェクトの一環として、ドライサーの『アメリカの悲劇』における「社会」の描かれ方についての分析を行った。アメリカ自然主義文学の代表作と目される本作では、「社会」に押しつぶされる「個人」の在り方が作者独自の文体的手法を用いて描かれている。本論は直接フォークナーにかかわるものではないが、アメリカ近代小説における「社会」について考察するためのより広い視座を得ることができた。本論は2019年9月に出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実績報告書に示したように、今年度は国内外で2度の研究発表を行うことで、成果の一部を示すことが目標であった。それは達成されたため、おおむね順調と言って良いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづきフォークナー作品の教養小説的時間性についての考察を深める。最終年度にあたる令和元年においては、7月に口頭発表、9月に論文として成果の一部をまとめ、後半は単著執筆に集中する予定である。
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