2019 Fiscal Year Research-status Report
中国古典文献における井戸の諸相――道具・しぐさを手がかりに――
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17K13433
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
喜多 藍 (山崎藍) 青山学院大学, 文学部, 准教授 (10723067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 唐詩 / 民俗学 / 瓶 / 簪 / 白居易 / 汗 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年6月に「唐詩に垣間見える術数文化ーー白居易・李賀の詩歌分析を中心にーー」と題して京都大学の共同研究班(東西知識交流と自国化―汎アジア科学文化論)の研究会で発表をおこなった。これは、従来関心を向けられることが少なかった詩歌に見られる術数文化の影響を、主に六朝から唐代の漢詩を通して検討したものである。 また2019年8月22日から8月26日まで、二松學舍大学准教授、早稲田大学會津八一博物館研究員、聖学院大学非常勤講師とともに、西安・敦煌に調査に入った。陝西省考古研究院副館長の王hui林氏より現地の研究状況について直接指導を受けた他、王小蒙副委員長・李明研究員の案内で最新の発掘文物の現物を調査した。また、涇渭発掘基地で劉呆道研究員の案内のもと、宝瓶が刻まれた潼関税村隋代壁画墓石棺の現物を調査した。敦煌に移動した後は、敦煌市博物館の石明秀館長と面談し莫高窟を見学し、市博物館の画像磚、釵、陶井などを中心に現物調査を行った。 これらの発表とフィールドワークの成果を反映させるべく、2篇(1篇は依頼論文、1篇は査読論文)を執筆した。 うち1篇「白居易新楽府「井底引銀瓶 止淫奔也」に詠われる「瓶沈簪折」について-ー唐詩に垣間見える術数文化ー ー」は、フィールドワークで得た資料や知見をもとに、白居易の新楽府にみられる術数文化の影響を考察したもので、2020年2月に公表した。 残り1篇「流れる汗・にじむ汗――白居易における舞妓の汗描寫を中心に―ー」は新型コロナウイルスなどの影響もあり当初よりも出版が遅れているが、近日中に公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発表の他、大陸でのフィールドワークで多くの知見や資料を得、論文を2篇発表出来たこともあり、おおむね順調に進展していると判断する。 ただし、発表した論文のうち1篇が当初計画していたものではなかったこともあり、本年度執筆予定である内容はまだ調べが行き届いていない。このため、期間を一年延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年3月頃からコロナ禍の影響が出始め、中国からの図書が得にくくなっている。また海外への資料調査やフィールドワークは非常に困難であると言わざるを得ない。加えて、国内も図書館などの施設が閉館となっており、資料をいかに集めるかが近々の課題である。 延長を認めて頂いたことを受け、当初の計画に則った成果を得られるように努めるべく、CNKI(中国学術文献オンラインサービス)やネット上の文献資料庫などを活用しつつ、これまでに集めた資料などで補っていければと思っている。具体的には、本課題を含めた「井戸」や「境界」に関する拙稿の見直しや漢詩における身振り、仕草がもつ意義をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度発表した論文のうち1篇が、当初計画していたものではなかったため、本年度執筆予定である内容はまだ調べが行き届かないでいる上、当初予定していたフィールドワークもまだ行えていない。可能であれば2020年3月にフィールドワーク計画をたてる予定も検討したが、コロナ禍のため、渡航を断念した。資料収集もままならないが、中華経典古籍庫などの大型データベース使用料金や国内複写などに充てる予定である。
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