2020 Fiscal Year Research-status Report
中国古典文献における井戸の諸相――道具・しぐさを手がかりに――
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17K13433
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
喜多 藍 (山崎藍) 青山学院大学, 文学部, 准教授 (10723067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 井戸 / 元シン / 白居易 / 日本 / 井 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年12月に『中国古典文学に描かれた厠・井戸・簪―民俗学的視点に基づく考察』を勉誠出版より上梓した。本書は独立行政法人日本学術振興会令和二年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金 研究成果公開促進費(課題番号「20HP5045」)の助成を受け、本研究課題の中で、これまでに発表した拙論を大幅な加筆修正を施した。内容としては、中国古典文学における厠と井戸の描写、およびそれにまつわる道具や、井戸の周囲などを「めぐる」という行為を主な検討材料とし、民俗学的視点から、古代中国の人々がそれらの場所・道具・行為をどのようなものと認識し、如何にその象徴性を詩歌などに反映させたかを考察している。特に、(一)民俗学的視点を取り入れ、文言小説や史書、筆記の記載に限定せず、古典詩歌をも対象に加え、空間に対するイメージ分析を行う。(二)道具(瓶や轆轤、かんざしなど)についても分析を進め、より多角的視点から作品を解明する。(三)一定の形式をもって繰り返し行われる儀礼(「めぐる」行為)の意義を明らかにするという、従来中国古典文献を解読する際にはほとんど取り入れられていない手法を採用した。古典詩や文言小説の研究に、新たな領域を開拓するのみならず、中国思想、民俗学、日本文学などの関連分野にも裨益し得る成果が期待出来ると考える。また本書については、香港の大手新聞「明報」にも取り上げられた。 上記拙著の他、2020年度は「京都大学人文科学研究所所蔵『天地瑞祥志』第十九翻刻・校注(五) 」(名古屋大学中国語学文学論集 (34) 2 - 14 2021年2月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたフィールド調査がコロナ禍により中止ないし延期になってしまった。 ただし、単著を発表出来た他、訳注も1篇掲載できており、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の猛威が収まらず、海外への資料調査やフィールドワークは非常に困難となっている。また、国内においても他大学の図書館などの施設が閉鎖していたり、申請が必要となるなど、資料収集が以前よりスムーズにいかなくなっている。文献と実地調査を柱としている本課題の近々の問題となっているが、延長を認めて頂いたことを受け、ネット上の文献資料庫などを活用しつつ、研究の範囲を広げ、日本における井戸の描写について概説をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、当初予定していた海外フィールド調査が出来なくなった他、それに伴う複写などが出来なかった。国内で使用出来る大型データベース(中華経典古籍庫など)の使用料に充てる予定である。
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