2022 Fiscal Year Annual Research Report
Various aspects of wells in classical Chinese literature with special reference to tools and gestures
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17K13433
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
喜多 藍 (山崎藍) 青山学院大学, 文学部, 教授 (10723067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 井戸 / 画像石 / 轆轤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は出土資料や美術品と井戸の描かれ方、および瑞祥としての井戸について調査を行った。特に、山東省武氏祠の画像石に描かれる井戸と他の井戸との差異について分析を進めた。 漢代の画像において多く描かれている題材として、食事にまつわる「庖厨図」がある。渡部武氏によると、後漢時代の画像にみえる庖厨図の内容および形式は類型化されており、出土地が山東や四川と異なっていても際だった差は見られない。武氏祠の「庖厨図」には複数の井戸が描かれており、いずれもはねつるべ式で人物が水をくみ上げる様子が描かれる。一方、河南省密県打虎亭の墳墓から出土した庖厨図には桔槹を用いない井戸が描かれている。恐らく井戸水を汲むための滑車「轆轤」を用いていると思われ、その周りには水を汲む女性がおり、井桁や井戸の内壁に磚が積まれていた。同様の轆轤式の井戸は、愛知県陶磁美術館所蔵(茂木計一郎氏寄贈)の漢代の灰陶井戸にもみられ、井戸枠には動物の文様が描かれ、釣瓶が付されている。門や戸などの五つの場所を祀る「五祀」のひとつである井戸が生活と密接に関わりつつも地域性によってその形式を変えており、それが画像石にも反映されていた。この点について早稲田大学會津八一記念博物館『古代中国の神話と祥瑞 : 武氏祠画像石拓本』に文章を発表した。 轆轤について調べている過程で、「庖厨図」以外に「泗水取鼎」があることに気づいた。戦国時期にはすでに使われていた轆轤だが詩歌では六朝時代からしか詠まれない。ただし画像石ではそれよりも古く登場する。この「轆轤」の象徴性については2023年12月のシンポジウムで発表する予定である。
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