2018 Fiscal Year Research-status Report
製造業のイノベーションと技術軌道の空間性に関する産業比較分析
Project/Area Number |
17K13577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌倉 夏来 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00791831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 技術軌道 / 製造業 / イノベーション / 立地履歴 / 化学産業 / 機械産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の製造業大企業における技術軌道の空間性に注目し、そうした軌道の形成過程を、研究開発機能の立地履歴、「技報」および特許からみた研究蓄積、海外企業との技術交流の観点から分析するとともに、研究開発活動によってどのようにイノベーションが実現されてきたかを、産業間の比較分析によって明らかにすることである。今年度は、昨年度十分に行うことができなかった、データの分析に重点を置いた。まず、事例企業が海外企業などから行ってきた技術交流について分析するため、各社の有価証券報告書に記載されている「経営上の重要な契約等」の欄に注目し、技術導入先、技術の内容、契約期間をデータベース化した。こうした分析を行い、特徴的な事例企業を数社取り上げ、イノベーションに関する情報を収集した。そのうえで、これらの技術を導入し、蓄積してきた拠点を明らかにし、特に工作機械産業について、技術軌道の空間性とイノベーションの実現過程に関する詳細な事例分析を行った。その結果として、創業初期に海外の企業から吸収・導入した技術が、現在においても重要な礎となり、企業の主要拠点において蓄積されているという事例が多く観察された。こうした経緯について、より詳細な内容が記されている資料や、関係者へのインタビュー調査などを通して、確認作業を行った。前半のデータ分析と、後半の質的調査を相互参照しながら、イノベーションの実現過程の空間的な記述が積みあがってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の懸念事項としていたデータベースの構築・分析が進展し、先行していた質的調査と相互に参照しながら進めることができているため。ただし、国内での調査がまだ不十分であるため、海外での調査には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるため、これまで積み残しているデータの分析と国内での調査をまとめ、関連する企業の海外拠点においても調査を行っていきたい。その前に、企業における代表的なイノベーションの事例について、その実現過程と技術軌道、具体的な拠点との関係をまとめる必要がある。そのうえで、不足してい内容を精査しながら、インタビュー調査・特許の分析で補うことで、研究目的である「企業の拠点に長年、蓄積されてきた技術と、新たに生じるイノベーションとの関係」を経済地理学的に解明していきたい。
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Causes of Carryover |
前年度に予定していた海外調査を行わなかったため、次年度に使用する。
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