2017 Fiscal Year Research-status Report
現代イランにおけるイスラームと科学知の併存―環境分野のイスラーム議論を手がかりに
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17K13587
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿部 哲 長崎大学, 多文化社会学部, 戦略職員 (90732660)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イスラーム / 西洋近代科学知 / 環境問題 / イラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に文献資料調査を通して、環境分野におけるイスラーム的視座について研鑽をおこなった。具体的には、イランで入手した「環境問題とイスラーム」を題材にした一次資料より、イラン宗教指導者層やイスラーム法学者の環境問題への見解について知見を深めることができた。また、メディア媒体(新聞、ラジオ、雑誌等)を介して発信されている環境問題が、どのようにイスラームの規範と関連づけられて提起されているのかという点に特に着目しながら、情報収集をおこない分析を進めた。イラン国内外における環境問題ニュースについては随時確認を行い、同国を取り巻く国内外の諸事情にも留意しながら、関連情報をアップデートした。 以上のような調査から、イラン政府によるイスラーム教義を媒介させた環境問題政策、イスラーム法学者による環境問題に対する視座、イスラーム聖典の援用のされ方についての傾向性が明らかになってきた。本年度の研究成果については、論考や学会・研究会などを通して発信できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成29年度に現地調査を実施予定であったが、イランの国内事情により、調査の延期を強いられた。昨今、環境活動家や環境保全活動の政治性が当局より問題視され始めたことは、今後の現地調査のあり方に影響を及ぼす可能性があり、国内情勢の動向に注視していく必要がある。現在は、文献資料調査を継続しながら、これまで蓄積してきたデータと合わせて、科学知とイスラーム知の併存関係性について総合的に分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はテヘラン、コムを中心に、可能であれば複数回、現地調査を実施する。本年度の調査より明らかになってきた環境分野におけるイスラーム言説が、当該地域の人びとの間でどのように受け入れられているのか(あるいは、受け入れられていないのか)について批判的に検討する。環境教育を行っている諸機関への訪問、関連イベントへの参与観察、環境エキスパートおよび市民への聞き取り調査などを通じて、環境分野で展開しているイスラームの多義性に関するデータを蓄積し、分析を試みる。同時に、イランの環境分野における科学技術の発展についても着目しながら、科学知とイスラームを媒介とする知識の競合、併存性のあり方への理解を深める。 現地調査後は、得られた全てのデータを整理・吟味し、環境分野において西洋近代科学を背景に展開する現代イスラーム解釈についての様相を読み解く。本研究の成果を人類学や宗教社会学などの分野における国際学術誌や学会発表を通して発信する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、平成29年度に現地調査を実施予定であったが、イランの国内事情により、調査の延期を強いられたため。イランの国内事情を考慮しながら、平成30年度(場合によっては翌年度)に複数回イランで調査を実施することを検討している。
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Research Products
(7 results)