2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13611
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高橋 正明 帝京大学, 法学部, 助教 (50757078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法学 / 比較憲法学 / 間接差別 / 平等原則 / 差別的意図 / 実質的平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカ及びカナダにおける議論を主な手がかりとして、間接差別(国家や社会が設ける制度・基準それ自体は人種や性別に中立的であるものの、結果として、特定の人種や性に属する者に不均衡な効果を生む行為)の司法及び立法的規制のあり方について憲法学的検討を行うことで、憲法上の平等原則の保障内容及び法規範性を明確化することを目的とするものである。また、本研究は、間接差別の違憲性を認定する上で差別的意図の立証を求めるアメリカの理論枠組と、差別的意図が認められない場合であっても、不均衡な効果を生む行為が特定の人種や性に属する者にもたらす不利益の内容を考慮しつつ、その違憲性を論じるカナダの理論枠組を対比させながら、それぞれの理論の先端的展開について分析し、我が国への示唆を探るという比較憲法学的研究手法を用いている。 本年度は、こうした研究手法の下で、まずアメリカの差別的意図理論に関する研究動向を網羅的に把握することに注力した。そこで、関連文献の収集・読解を行った結果、アメリカでは、心理学・社会学・哲学などの他領域における研究成果を採り入れた上で差別的意図理論の再構成を試みる学説の蓄積が豊富であり、その研究水準が高いものであること、他方で、その有用性については、差別行為の主体の違い(立法機関・行政機関・私人)に応じて、さらに丁寧に検討をする必要があることが明らかになった。 また、海外での文献収集に加えて、アメリカの差別的意図理論の先駆的研究者であるブルックリン法科大学院のWilliam D. Araiza教授や、同国の差別禁止法制について見識の深いコロンビア大学のOlatunde Johnson教授と意見交換を行った。意見交換を通じて、差別的意図理論の意義と限界や、行政機関の制度的特性を利用した間接差別の規制方法などについて知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に示したように、基礎的文献の収集・読解を通じてアメリカの差別的意図理論に関する近年の研究動向を概ね把握することができたと同時に、海外研究者との意見交換を通じて、間接差別の規制のあり方について複合的観点から分析することができた点を挙げておきたい。これによって、今後、差別的意図理論の応用可能性及び平等原則の法規範性をより具体的に論じるための基盤を形成することができたと思われる。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の基礎的研究を通じて、アメリカの議論については研究の基本的方向性を確定することができたため、今後はそれらの知見を踏まえつつ、応用的文献の収集・読解を行い、差別的意図理論の有用性などについてさらに掘り下げて検討する。また、アメリカの研究動向の分析に一定の見通しが立ち次第、カナダの研究動向の先端的展開について分析を開始する。また、こうした研究の妥当性を検証するという観点から、平成30年度も、海外の先駆的研究者との意見交換を行う予定である。なお、文献収集に関して、国内で入手することが難しい文献については海外での収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に公刊した論文の抜刷の作成費及び郵送費として23,000円程度を見込んでいたが、抜刷の納品が平成30年度の4月になり、平成29年度中に抜刷の作成費・郵送費を支払う必要がなくなったため、その分の次年度使用額が生じた。次年度使用額は上記論文の抜刷の作成費・郵送料に充てられる。この点の他は、次年度における使用計画に変更はない。
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