2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13611
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高橋 正明 帝京大学, 法学部, 講師 (50757078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法学 / 比較憲法学 / 間接差別 / 平等原則 / 差別的意図 / 動機審査 / 実質的平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、間接差別(法文上は人種や性別に中立的であるものの、特定の人種や性に属する者に不均衡な効果をもたらす行為)の司法及び立法的規制のあり方について比較法学的検討を加えつつ、憲法上の平等原則の保障内容及び法規範性を明確にするための作業を行った。本年度は、前年度の研究成果を踏まえ、応用的文献の収集・読解を行い、間接差別の違憲性を認定する上で差別的意図の証明を求める理論枠組の有用性についてアメリカの議論を手掛かりに体系的に分析した。 分析手順として、政府が、憲法上追求してはならない不当な目的を実現する意思・動機を持って政府行為を行った可能性があることを考慮に入れて、裁判所が、当該行為の憲法適合性を審査する手法(動機審査)一般の妥当性を検証した上で、間接差別に関する動機審査のあり方について検討を行った。 具体的な成果として、動機審査については、平等の領域に限らず、多数の議員から成る立法機関の不当意思を認定することは困難であるという裁判所の制度的能力上の課題がある一方、機関意思の認定方法を柔軟化することで、少数の議員から成る立法機関や、独任制の行政機関の不当意思を認定できる局面もありうることを明らかにした。その上で、間接差別に関する動機審査も同様の課題を抱えており、動機審査には一定の限界があることを明らかにした。 また、こうした限界があることを踏まえ、差別的意図を認定できない場合に、不均衡な効果が特定の集団に及ぼす不利益の性質に注目して間接差別を規制するアプローチを支持する学説、諸外国(カナダなど)の憲法判例、及び国際人権法判例について検討する必要があるとの知見を得るに至った。 なお、これらの検討に関連して、嫡出否認権を夫にのみ認める民法上の規定を合憲とした大阪高裁平成30年8月30日判決の評釈を公表し、同規定も不当動機の有無という観点から分析できる側面があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に示したように、応用的文献の収集・読解を通じて差別的意図に着目した間接差別の規制手法の意義と限界について概ね把握することができた。また、平等の領域に限らず、動機審査理論一般の有用性について一定の知見を獲得できたことも、本研究の体系性を基礎づける点で意義のあるものであったことを指摘しておきたい。なお、上記の間接差別に関する動機審査の研究成果の取りまとめを優先させた結果、平成30年度内に実施予定であった海外研究者との意見交換を次年度に行うように調整した。これは研究作業の効率性に配慮した結果であり、研究計画全体の進行に遅れはない。以上のことから、本研究課題の研究目的は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究を通じて、上記の研究成果について概ね論文として取りまとめを行ったため、次年度内に公表するように努めたい。さらに、不均衡な効果が特定の集団に及ぼす不利益の性質に注目して間接差別を規制するアプローチに関する理論枠組の先端的展開について、諸外国の議論を手掛かりに分析を行う。また、こうした検討の妥当性を検証するという観点から海外の先駆的研究者との意見交換及び文献収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施予定であった海外調査(研究者との意見交換及び文献収集)を次年度に行うよう調整した結果、その分の次年度使用額が生じた。次年度使用額は当該海外調査の費用に充てられる。この点の他は、次年度における使用計画に変更はない。
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