2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Constitutional Study on the Regulations of Indirect Discrimination
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17K13611
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高橋 正明 帝京大学, 法学部, 講師 (50757078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法学 / 比較憲法学 / 差別的意図 / 間接差別 / 実質的平等 / 制度的能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、差別的意図理論の有用性について分析した前年度の研究成果を紀要で公表するとともに、差別的意図が認められない場合であっても間接差別の違憲性を認定するカナダの判例の理論枠組の有用性について分析した。 まず近年のカナダの平等判例は、ある国家行為が、直接的ないしは間接的に、カナダ人権憲章15条1項に列挙された区別事由(あるいはそれに類似した事由)に該当する集団に対する偏見を生じさせ、不利益を永続化させる場合には差別を認定する立場を採っているものの、必ずしも間接差別を積極的に認定しているわけではない点を確認した。また、間接差別の違憲性を認定した判決と、それ以外の合憲判決を比較すると、明示的ではないものの、①(不作為を含む)国家行為が特定の集団に不利益をもたらす直接的原因となっているか否か、②裁判所の制度的能力に照らして適切な救済措置を選択・実施できるか否かを考慮して違憲判断が行われている可能性があるとの知見を得るに至った。とりわけ、②の観点はこれまであまり注目されてこなかったものであるものの、我が国の判例(夫婦同氏制合憲判決など)も国家機関の権限配分を意識しつつ間接差別の憲法適合性を判断している可能性があり、②の点についてさらに分析を深めることが有意義ではないかと評価した。 また、海外での文献収集に加えて、カナダにおける間接差別理論に関する先駆的研究者であるカルガリー大学のJonnette Watson Hamilton教授及びJennifer Koshan教授にインタビューを行い、平等判例の理論動向などについて知見を深めることができた。 研究期間全体を通じて、アメリカ・カナダにおける間接差別に関する理論動向を整理・分析し、我が国の議論状況への一定の示唆を得ることができたと思われるが、カナダの動向に関する研究成果はまだ公表できていないため、速やかに紀要などで公表したい。
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