2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13622
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
関根 豪政 名古屋商科大学, 経済学部, 准教授 (60736510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | WTO / 補助金 / 自由貿易協定 / TPP |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自由貿易協定(FTA)における補助金関連規定の分析を行い、それについて研究成報告を行うことができた。具体的には、台湾のAcademia Sinicaにおいて開催された国際シンポジウム”Rethinking Free Trade: Liberal International Economic Order in the Wake of Brexit and Trump”において研究報告を行った。当該報告では、日本のFTA政策の動向を概観したうえで、日本が締結した協定において補助金規律がどのように展開されているかについて分析し、さらに、EU韓国FTA及びEUシンガポールFTAとの比較検討を行った。分析の結果、EUの2つの協定においては、競争法との接点に注目する規定が設けられており、それが今後の新しい補助金規律を示唆するものと考えられる一方で、そのような規定は日EU経済連携協定においては導入される可能性は低く、依然として今後の展開が見通せないことが確認された。なお、本シンポジウムでは、多くの外国人研究者から、日本のFTA政策が2017年から18年あたりにかけて方針転換が見られるのではないかとの指摘を受けた。たしかに、環太平洋パートナーシップ(TPP)から米国が離脱したことは我が国のFTA政策において大きな意味を有するといえ、それがどのように今後の政策に影響を与えるかは注視する必要がある。かかる論点の分析は、本プロジェクトの残りの期間でさらに精緻化することが必要と感じた次第である。その意味で、国外で報告を行ったことの意義は大きかったと言える。本シンポジウムの成果は書籍として公表することが試みられたが、残念ながら実現されなかったため、報告時のペーパーについては、更新して何らかの形で公表する方法を探っている段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】欄に記載した研究報告では、日本のFTA政策の分析を主眼点としつつ、EUが締結したFTAとの比較検討を行った。まず、日本のFTA政策については、既存の協定の締結状況との基礎的な情報分析から、その内容の細部(内容の瑕疵)の把握まで行った。日本のFTAに対しては、数は豊富でありながら、内容が一様であり(特に補助金規律については)、時代などに合わせた変化に乏しいことを指摘した。そして、EUのFTAとの比較分析においては、とりわけEU・韓国FTA第11.9条やEU・シンガポールFTA第12.8条に見られるような補助金と競争法との関係を規定する条項の分析を行った。また、本報告においては、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の国有企業章に創設された非商業的援助の概念も含めて検討を加えたため、日米欧の三極が関与したFTAにおける補助金規律ないしそれに類する規律の分析を完了することができた。研究の初年度においては、主要国のFTAにおける補助金規律の更なる分析のための礎が構築できたと言え、計画としては順調と評価できるであろう。なお、当初計画では、EUの国家援助についての研究を初年度の研究とする予定であったが、シンポジウムの報告との兼ね合いで、三極のFTAの比較分析を優先した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究においては、日米欧の三極が関与しているFTAにおける補助金規律の概要について把握することができた。2年目以降は、これらの細部をさらに分析していく過程に入りつつ、本来初年度に実施する予定であったEUの国家援助についての研究を行っていく予定である。 幸い、2年目以降も、研究成果を公表する機会が予定されているため(種々の研究プロジェクトへの参加が決定済み)、このペースで取り組み、持続的に研究成果を公表したい。
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Causes of Carryover |
旅費及びその他については予定どおりの利用額となった。相違が生じたのは物品費である。これは、購入書籍が予定よりも少ない量にとどまったことに起因する。初年度に予定していた研究ではなく、2年目に予定していた研究を先行させたため、書籍代がよりかかると予想される研究は2年目に遂行予定である。よって、次年度使用額は2年目の研究のための書籍代に充てることを計画している。
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