2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢犯罪者における「社会復帰」概念に関する理論的実証的研究
Project/Area Number |
17K13635
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
安田 恵美 國學院大學, 法学部, 講師 (90757907)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 高齢犯罪者 / 社会復帰 / 社会的排除 / 社会参加 / 傷つきやすさ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実績は以下の2点にまとめることができる。 まず、海外の研究者および実務家との議論を行い色々な示唆を得ることができた。平成29年度は、フランスのみならず、高齢受刑者処遇の研究を行っているベルギーのSNACKEN教授のもとを訪ね、アングロサクソンとフランスの両方の影響を受けた「社会復帰」に関する議論状況についても知ることができ、より広い視点から「高齢」の特性について考察する手がかりを得た。また、フランスのランス大学HERZOG=EVANS教授のご厚意により、2度にわたり日本の高齢者犯罪の状況についてプレゼンテーションを行う機会を得た。プレゼンテーションを受けて、日仏比較をしながらの議論を行うことができた。この議論によって、日本の状況を相対的に考察することができたという点は、本研究において極めて重要な意味を持つと思われる。 次いで、日本の高齢犯罪者が置かれている「社会的排除状態」について、いまだ十分とはいえないものの社会福祉学や労働経済学の先行研究・理論を手がかりとしながら、理論的な整理を行った。就労を前提とした議論の中で、「高齢」ゆえの「傷つきやすさvulnerability」に着目した、「社会参加」のあり方、そして「権利保障」の重要性について、様々な領域の研究者・実務家と議論を行い、考察を深めることができた。その考察をもとに、法学セミナーへの寄稿、日本およびフランスにおける各種研究会における研究会報告の形で公表することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、高齢犯罪者処遇に関してベルギーとフランスの研究者と意見交換をすることができ、分析や考察にとっての重要な示唆を得ることができた。また、社会福祉学や労働経済の理論からヒントを得ながら、高齢犯罪者が置かれている「二重の排除状態」とそれを打破するための「社会参加」に向けた方策についての手がかりに関する考察を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
近時、ヨーロッパ諸国では、アングロサクソンにおけるグッドライブスモデル・リスクニーズレスポンサビィティの考え方が各国の法制度や犯罪対策・犯罪者処遇の理念と合致するのかどうかについて検討がされつつある。とりわけ、フランスにおいては、従来の「社会参加insertion sociale」の考え方との異同について検討がなされ始めたところであるといえよう。この議論の動きは、フランスにおける議論を参照する際のみならず、日本において「社会復帰」概念について検討する際にもカギとなるものと思われる。そこで、今後は、この議論の動きに着目しながら、学術的な議論と現場レベルでの取り組みの状況の両方に目を配り、高齢犯罪者の「社会復帰」概念について検討を深める必要があろう。
|
Causes of Carryover |
平成29年度にパソコンを購入予定であったが、ベルギー・フランス調査にあたって先方との調整が年度末までかかったため、「旅費」の執行額が直前まで確定せず、ペンディングしていた。そのため、平成30年度には、調査から得られたデータを分析するためのパソコンを購入する予定である。
|