2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢犯罪者における「社会復帰」概念に関する理論的実証的研究
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17K13635
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
安田 恵美 國學院大學, 法学部, 准教授 (90757907)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢犯罪者 / バルネラビリティ / 社会参加 / 社会復帰 / 刑務所 / 社会内処遇 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、高齢犯罪者の社会復帰について、とりわけ「ヴァルネラビリティ概念」に着目して、理論研究および実態調査を行った。 理論研究としては、刑事法や犯罪学に関するものみならず、法学領域においても社会保障法や民法における議論、あるいは法学以外でも社会福祉学や社会学の議論について、日仏比較を行いながら探求した。 実態調査としては、国内については刑務所、保護観察所、更生保護施設、地域生活定着支援センター等の「高齢犯罪者」の処遇・社会参加に向けた支援を行っている機関と、犯罪をしたことがある高齢者も受け入れている地域の社会資源への調査を行っている。これらの調査を行うにあたっては、社会調査を用いた研究を行っている研究者からの助言を受けながら行っており、より多角的な「実態の把握・分析」に基づいた研究成果を出せるよう現在研究を進めている。また国外調査としては、2019年2月にフランス調査を行った。そこでは、刑事施設参観のみならず、高齢犯罪者に対する自由刑の在り方や彼ら・彼女らの社会参加にとって必要な施策に関して実務家・研究者と意見交換を行うこともできた。 これらの研究成果は、第5回フォレンジック看護学会教育講演「高齢犯罪者の権利保障と社会復帰」(この講演の内容は同学会学会誌に論説として掲載予定)や安田恵美「『拘禁の継続と相いれない』受刑者への自由刑の裁量的執行停止制度の適用に関する一考察」、大阪市立大学法学雑誌64巻4号(2019年)としてすでにアウトプットした。また、現在2018年度の研究活動をもとに論文を執筆しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最終年度である2019年度はアウトプットに向けた総仕上げの年度である。そこで、2018年に行った理論研究や調査を通して、本研究課題のまとめの方向性を確認し、本研究課題では探求しきれなかった課題があることも確認することができた。その意味では研究プロジェクト2年目を終えた段階で得らえた成果としては妥当であろう。 一方で、研究を進める中で確認することができた、アウトプットする際には検討しておかなくてはならない事柄・論点については、十分に資料を収集し検討することができていないため、当初の研究計画以上に進展しているとはいいがたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、論文や学会・研究会報告、講演といったアウトプットを中心に進めていく予定である。そのために、2017年度、2018年度の研究活動で得られた成果を改めて整理し、不足している資料・データを明らかにする作業を行う必要がある。そのうえで、それらを入手するために、国内外での研究活動をしながら、アウトプットを進めていくこととする。 また、本研究を進める中で発見した、より深く検討すべき論点あるいは、今後検討を始めなくてはならない論点についても整理し、本研究が終了したのちの研究につなげるための準備もすることとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じないように研究費の使用計画を立てて使用したものの、見積や想定していた金額よりも実際にかかった費用の額が低いということもあり、若干の次年度使用額が生じた。そこで今年度は、早めの執行につとめ、差額を早期に把握しより計画的に図書等の購入計画や出張計画を立てたい。
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