2020 Fiscal Year Research-status Report
契約法における規制手法としての任意/強行法規と社会的厚生
Project/Area Number |
17K13647
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 貴文 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (00761488)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 契約 / 約款 / 任意法規 / 強行法規 / 物権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度から継続した研究として、消費者契約におけるアクターの役割分担について、「消費者契約の協働形成に関する一考察(下)」法律時報92巻4号100頁を公表し、定型約款の改正資料の整理として「資料と紹介 債権法改正立法資料集成(5)定型約款(3・完)」民商法雑誌156巻3号639頁を公表した。 前者の論文は、消費者契約における自由と規制の問題について内容形成主体というアクターの観点から捉えなおす構想を提示するものであり、この研究の延長として、法と経済学会において「消費者契約の協働形成」というタイトルで報告を行った。これらの視点は、任意規定か強行規定かという問題は規制主体の選択の問題であることを示唆するものとなっている。この観点から、消費者保護における強行規定の機能に関する近時の論文を検討し、「強行規定による個別的な消費者保護の可能性」アメリカ法2020年号1頁として書評を公表した。この検討により、規律形成主体により適切な役割分担がなされる必要があるという知見を得た。 約款に関しては、約款の変更を当事者にゆだねることの是非について、適格消費者団体による包括的変更条項の差し止め請求を棄却した裁判例を検討し、「携帯電話の通信サービスに関する約款の変更条項についての適格消費者団体による差止訴訟」リマークス62号30頁として公表した。この検討により、変更条項の作成を当事者に委ねることによって当事者の情報上の優位性を活用することができるが、他方で不可能なほどに詳細な変更条項を作成することを当事者に要求することは適切ではないという知見を得た。 さらに本年度は物権規定の強行法規性についても検討を始めた。その途中経過をまとめた報告として、「取引費用の観点から見た物権の本質」というタイトルで研究会報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は前年度の研究課題の継続として消費者契約における強行法規の問題へのアプローチと、約款に関する資料の整理を行った。これらの研究から得られた知見に基づいて、任意/強行規定論の体系的理論の構築を行いたかったが、本年度はかなわなかった。しかし他方で、物権法の規定の強行法規性の検討に着手することができた。これによって研究の進行には遅れが出たが、より幅広い考察が可能となったため、よい成果が得られたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はもともと契約法を対象とするものであったが、本年度は、本研究の対象を物権にまで広げた。それによって多少の遅れが生じたが、むしろ考察を深めることができた。次年度は、本年度の研究によって得られた知見をもとに、より体系的な成果をまとめ、公表することを予定している。
|
Causes of Carryover |
研究に遅れが生じたことにより、購入予定の書籍の購入時期が遅れたため。
|