2020 Fiscal Year Research-status Report
原発災害の不確実性に対する人々の不安(厚生損失)形成メカニズムの実証的解明
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17K13734
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
山根 史博 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (40570635)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原発事故 / 不確実性 / 住民の不安 / 情報環境 / 地域間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、福島第一原発事故に関連する2つの不確実性(放射線被曝の健康影響と事故再発の可能性)に着目し、それらに対する人々の不安を効果的に緩和する方策を検討するための情報基盤を構築することである。そのためには、人々がこれまでどのような情報環境の下で、不確実性をどう認識し、不安にどう作用したかを解明すると同時に、不安の大きさを政策費用と比較可能な貨幣尺度(厚生損失)で測ることが求められる。以上を念頭に、本研究では、福島県・原発立地地域・電力消費地の3地域を対象にweb調査を実施し、前回調査を実施した平成24・25年からの変化や地域差、帰結の不確実性を考慮しながら、原発災害の不確実性に関する不安(厚生損失)形成メカニズムの実証的解明を試みる。 以上の目的に対し、本研究では2つの不確実性それぞれについて、平成30年度に福島県民と東京都民を対象とする調査A「放射線被曝の健康影響に関するweb調査」を、平成31年度に原発立地地域と都市部の住民を対象とする調査B「事故再発の可能性に関するweb調査」を実施する。調査Bの調査対象地はその時点での再稼働などの社会状況を見て判断する。以上の調査では、前回調査で開発したhigh-and-low 区間選択法で不確実性への認識を聞き出し、不安については表明選好法を活用し貨幣尺度で計測する。 令和2年度は、福井4原発の立地地域とその電力消費地である大阪市、および浜岡原発の立地地域とその電力消費地である名古屋市の住民を対象に調査Bを実施し、原発の安全性に関する情報の接触状況と不安との関係を分析した。また、調査Aの成果のうち、低線量被ばくの健康影響に関する情報接触について、福島県民と東京都民の比較、並びに原発事故直後の2011年と2018年の変化を分析した結果を日本原子力学会2021年春の年会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5.研究実績の概要」で述べた通り、本課題で予定していたすべての調査・分析を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた分析結果を引き続き学会などで発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により計画通りに出張旅費を使用できなかったことと、所属大学の研究費使用に係る規定が変更されたことで調査Bへの支出額を減らさざるを得なかったためである(具体的には、一定額以上の外注をする場合は競争入札を行わなければならず、そのような手続きを行う時間的猶予がなかった)。 未使用額については、次年度(2021年度)の出張旅費及び成果発表にかかる経費に充てる。
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