2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13741
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 租税競争 / 法人税 / 国際貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は不完全雇用下で企業行動を考慮に入れた法人税競争に関する理論的研究を行った。研究の結果は大きく分けて二つある。 まず一つ目の結果は、市場規模が大きい国ほど法人税率が高くなるということだ。市場規模が大きいとそれだけで多国籍企業を引き寄せる要因になり、政府はある程度高い税率を課しても多国籍企業が国内から退出しないことになる。一方で、市場規模の小さい国は、市場規模の大きい国よりも自分の国に立地してもらうために税率を低くして多国籍企業を引き寄せようとする。したがって、市場規模の大きい国の政府は小さい国の政府に比べて高い法人税率を課す。 二つ目の結果は、生産費用の増加が各国の法人税率の低下の要因になっている、ということである。今、ある国(国1)の生産費用が高まったと仮定しよう。生産費用が高くなった国1は多国籍企業にとって生産費用が高いので立地する誘因は小さくなる。すると、多国籍企業が他国(国2)へと流出してしまう可能性が出てくる。国1は他国へと流出してしまう多国籍企業を引き留めるために法人税率を引き下げようとするのである。一方で他国(国2)にはどのような影響があるのか。他国には二つの相反する効果が存在する。一つは、相手国(国1)の生産費用が相対的に高くなったので、多国籍企業は国2に立地する誘因が高まる。その結果、国2の政府は法人税率をある程度高くしても生産費用の高い国1へは多国籍企業が流出しないと考えるので、法人税率を高い水準に設定する効果である。もう一つの効果は、国1が多国籍企業を引き寄せるために法人税率を下げるので、国1の行動に引きずられて、国2の政府も同様に法人税率を下げるという効果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は研究計画通り論文を完成することができた。また、現在2018年度に行う予定である研究のモデル構築の目途が立っているので、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、2017年度に行った研究を国内外でさらに研究報告を行い、研究成果を公開する。研究会では国内外の研究者と積極的に議論を行って論文の質を高めていき、海外査読付き雑誌に投稿する。また、2018年度に行う予定の研究を行い、研究成果としてまとめる。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会に参加することができなかったことと、予定していた英文校正を行う必要が生じなかったことから次年度使用額が生じた。次年度は、国際学会に参加して英文校正を行う予定である。
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