2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13741
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 租税競争 / 法人税 / 国際貿易 / 大企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、大企業と小企業が両方存在している経済に焦点を当てて研究を行った。大企業と小企業の両方が存在しているときに、政府がどのような法人税を決定するのか、そして大企業を自国に誘致するために大規模な補助金を用意すべきなのか、ということを考えるうえで重要な基礎的な経済モデルの構築をおこなった。そこで、大企業と小企業が研究開発投資を行う場合 大企業と小企業とではどちらが研究開発投資を積極的に行うのか、という問題に取り組んだ。この研究において、大企業とは産業全体の価格をみて自分の価格を決める企業とした。一方で、小企業とは、産業全体の動向とは無関係に自身の費用のみを見て価格を決める企業とした。その結果、以下の二つの成果を得ることができた。 一つ目は、市場規模が十分に大きい場合、大企業のほうが研究開発投資を行うということである。市場規模が大きいと大企業のほうが研究開発投資を行う誘因が大きくなる要因が二つ、小さくなる要因が一つある。(1)市場規模が大きいと、大企業の生産量が多くなり、研究開発投資の価値が高まる。(2)市場規模が大きくなると、小企業の参入が多くなる。その結果、大企業はより研究開発投資を行って、販売価格を下げて、小企業を市場から追い出したくなる。(3)小企業が多くなることで市場の競争が激しくなり、研究開発投資を減らしてしまう。理論的に(1)と(2)の効果の合計は(3)の効果を上回ることを理論的に示すことができた。その結果、市場規模が大きいとき、大企業の方が小企業よりも研究開発投資が大きくなる。 二つ目は、大企業の研究開発投資は経済全体にとって望ましい水準よりも低いことが分かった。その結果、政府は大企業の研究開発投資に補助金を与えて、より一層大企業に研究開発投資を行うように促す必要があることを理論的に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、上記の大企業と小企業が共存する経済モデルの構築を行った。しかし、当初の見通しよりも興味深い考察が得られることが分かったので、大企業を誘致する政策を議論する前に、大企業と小企業とが共存する際に起こる経済状況をつぶさに分析することに時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度の研究成果を国内外の学会で報告し、研究成果を世間に広めるとともに研究成果をよりよりよい形でまとめる。また、研究会では国内外の研究者と積極的に議論を行って論文の質を高めていき、海外査読付き雑誌に投稿する。大企業と小企業があるモデルを用いて、政府は補助金を与えて積極的に大企業を誘致すべきかどうか、という問題に関する研究を行い、研究成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
昨年度は、予定していた国際学会に参加することができず旅費として計上していた研究費を使用することができなかった。また、2月にベトナムでの多国籍企業へのヒアリングを行ったが、2019年度中に研究費を支出することができなかった。2020年度は、国際学会に参加することと英文校正を支出する予定である。
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Research Products
(5 results)