2018 Fiscal Year Research-status Report
実践共同体における知識移転プロセスに関する理論的・経験的研究
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17K13784
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
小江 茂徳 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (20611635)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 職場における学習 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の実施計画は、 (1) 理論的検討においては、平成29年度に引き続き、文献サーベイを行い経験的調査に必要な概念枠組みについて精緻化する作業を行うこと、そして(2)経験的検討においては、調査協力を行う企業や業界団体の資料収集を行い、調査設計を行うことであった。 研究実績としては、(1)に関して、実践共同体に関する先行研究のレビューを行い、主に次の点が明らかになった。これまでの先行研究は、実践共同体を組織のパフォーマンスを高めるためのナレッジマネジメントのツールとして捉え、その構築や管理について検討するアプローチと、組織の現場で生じる学習を理解するための分析枠組として用いて検討するアプローチとに大別できる。前者のアプローチについては、実践共同体概念の定義が曖昧である故、それぞれの先行研究が実践共同体として同定する経験的対象の間で共通点が乏しいといった課題が挙げられる。また後者のアプローチについては、最近の研究トピックとしては、「(境界)オブジェクト」や「物質性」の概念に注目が集まっていることなどが明らかになった。これらをまとめた成果については、平成31年度(令和元年度)中に論文として公刊することを予定している。 (2)に関して、地方自治体をリサーチサイトとして、主に人材育成の観点から管理職員と一般行政職員に対して、ヒアリング調査を実施した。成果としては、管理職員の育成に注目し、当該地方自治体にて実施されている管理職研修、目標管理制度、多面評価制度を通じた育成の取り組みを紀要論文と公刊した。また一般行政職員を対象として、育児休業取得を通じたアイデンティティの変化とそれがもたらす効果について、学会(部会)報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の実施計画は、 (1) 理論的検討においては、平成29年度に引き続き、文献サーベイを行い経験的調査に必要な概念枠組みについて精緻化する作業を行うこと、そして(2)経験的検討においては、調査協力を行う企業や業界団体の資料収集を行い、調査設計を行うことであった。 (1)理論的検討については、適切に進行している。平成30年度は主に実践共同体概念と学習論の領域で近年注目されている物質性の概念について文献サーベイを実施し、平成31年度も継続する予定である。 (2)経験的調査については、適切に進行している。平成30年度は、地方自治体をリサーチサイトとして、フィールドワークを実施した。成果については、調査対象となった地方自治体による管理職員育成の取り組みについて紀要論文として公刊した。また一般行政職員(男性)による育児休業取得を通じたアイデンティティの変化とその効果(学習)については、学会(部会)にて報告を行い、当該報告を発展させた成果について、平成31年度に同学会の全国大会にて報告することが決定している。さらに平成30年度に、他の企業に対し、研究対象として協力依頼を行い、パイロット調査を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は、理論的検討については、前年度まで実施してきた文献レビューを継続し、その成果について論文として公刊することを予定している。 また経験的調査については、すでに実施した地方自治体の調査結果について、平成30年度に実施した報告を発展させた内容について学会報告を行うとともに、学会誌への投稿を行う。また、前年度に実施したパイロット調査に基づいて、職場の学習構造を明らかにするための具体的な調査計画を策定し、協力先と協議することを予定している。調査協力の許可が下り次第、本調査を実施し、その成果について学会報告や論文等で発信していくことにする。
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Causes of Carryover |
企業への調査を実施するにあたり、先方の都合により平成31年度(令和元年度)に調査を延期することになったことから、その分の旅費が未利用となった。この未利用分に関しては、調査に必要な旅費として次年度に支出する予定である。
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Research Products
(2 results)