2017 Fiscal Year Research-status Report
正統性修復の言説戦略に関する研究:日米の価値観の違いに着目して
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17K13789
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
酒井 健 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (60757061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 企業不祥事 / クライシス・コミュニケーション / イメージ回復理論 / 状況に応じたクライシス・コミュニケーション理論 / 非言語コミュニケーション / 文献研究 / 比較事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は理論と実証の両面において効率よく研究が進み,論文のドラフトを英語で書き上げるところまで至った. 1. 文献研究:不祥事を起こした企業が評判を再構築するために行うコミュニケーションに関する既存文献を幅広くレビューした.この文献研究を行う上で,科研費を用いて(1)日本の学会に参加して関連領域の研究者と対話し,文献リストを効率的に作成した.また(2)その文献リストに基づき必要な文献を購入した.この文献研究を通じて(1)「正統性の修復理論」よりも「クライシス・コミュニケーション理論」(具体的には「イメージ回復理論」と「状況に応じたクライシス・コミュニケーション理論」)の方が本研究の問題意識に適していることが明らかになった.また(2)漠然と価値観の影響を見るのではなく,価値観・文化と密接な関係がある「非言語コミュニケーションのあり方」がクライシス・コミュニケーションに及ぼす影響を明らかにする方向へと研究の焦点を絞り込むことができた.なお,この文献研究の成果は,本研究課題の中間発表という位置づけで,『一橋商学論叢』で査読付き論説として公刊されることが決定している. 2.事例研究:上記の文献研究を通じて問題と分析枠組みが明瞭になったことから,計画を若干前倒しして比較事例研究を開始した.事例には「期限切れ鶏肉使用問題」における日本企業2社のクライシス・コミュニケーションを選定した.両社のクライシス・コミュニケーションに関するデータを収集して分析を進め,クライシス・コミュニケーションの結果に対する非言語要素の影響を抽出することができた. 3.論文執筆:ここまで行った文献研究と事例研究の成果をまとめた論文のドラフトを英語で書き上げた.その際,科研費で英文校正を利用できたことから,英語の質を効率的に高めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.文献研究の成果をまとめた論説が査読付き学術誌で公刊されることが決定した.これは当初計画では予定していなかった成果である. 2.文献研究を通じて視点が定まったことから,事例研究のデータの収集と分析が当初の予定以上に効率よく進んだ. 3.以上より2018年2月から3月にかけて英語で実証論文のドラフトを書き上げ,英文校正にかけることができた.当初は学会発表を経て構想を固め,2年目に論文を書き上げる予定であったが,これを前倒しすることができた,
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Strategy for Future Research Activity |
1.クライシス・コミュニケーション理論が属するパブリック・リレーションズ領域の海外学術誌を投稿先とする方針だが,今後,海外研究者と対話して具体的な投稿先学術誌を絞り込む. 2.早期に論文を投稿し,投稿先学術誌のエディター・レビュアーの意見を聞きながら,論文の質を高めていくことに集中する.その際(1)論文の改善に必要な文献があれば追加で購入して論文に組み込む.(2)データの追加収集・分析を求められた場合,可能な限り対応する.(3)論文の改善を効率よく進めるために,学会に参加して,関連する領域の研究者と積極的に意見交換を行う予定である.
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Causes of Carryover |
1.海外出張を実施せずに論文のドラフトを書くことができたことや,大学院生のアルバイトを用いずに研究代表者自身でデータ分析を行ったこと等により,旅費と人件費が当初予定よりも抑えられた. 2.次年度使用額は,主に追加で読むべき文献が生じた際に,その購入に充てる予定である.今年度も,研究の進展に伴い,当初予定以上に文献を購入するに至った.恐らく今後も論文の査読プロセスにおいて,論文の改善に必要な文献が出てくることが予想される.
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