2019 Fiscal Year Research-status Report
2過程モデルによる外集団先制攻撃の心理メカニズムの解明
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17K13903
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
三船 恒裕 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (00708050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内集団バイアス / 外集団攻撃 / 内集団ひいき |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は進化生物学・進化心理学の理論を基にしつつ、外集団への攻撃行動が生じる心理メカニズムを明らかにすることにある。令和元年度は集団間囚人のジレンマ差の最大化ゲーム( IPD-MD)を実施した。IDP-MDは外集団に対する攻撃行動を測定するゲームとして広く用いられており、内集団への利他性と外集団への攻撃性が共進化したとする共進化モデルの実証的に検討する実験パラダイムとしても有名だが、これまでの多くの研究で外集団攻撃行動が生じず、共進化モデルの妥当性が疑われてきた。しかし、IPD-MD実験の多くが、攻撃することによって自集団に何の利益も生じない状況における外集団攻撃を測定している。共進化モデルでは外集団を攻撃することによって、攻撃した個人ではなく、自集団全体が利益を得られるうる状況を想定している。よって、これまでのIPD-MDは不適切な状況で共進化モデルを検証していた可能性がある。 本研究では以上の問題を克服するため、外集団攻撃が内集団への利益となりうるかどうかをフレームの違いとして操作し、外集団攻撃の程度を測定した。具体的には、集団間プールに投資した金額は、外集団から引き下げられた金額がそのまま集団間プールに投資した金額に上乗せされることで2倍になり、その金額が自集団に平等に分配されると教示する実験条件と、通常のゲームの説明を用いた統制条件で外集団攻撃を測定した。実験は2度行なったが、いずれの実験においても外集団攻撃の程度は条件間で変わらず、外集団攻撃が自集団に利益をもたらすというフレームを用いても外集団攻撃が生じないことが示された。 令和元年度はこの他にも外集団攻撃に関するDe Dreu & Gross (2019) のBBS論文に対するコメント論文、罰行使者に対する評価に関する論文、信頼行動に関する心理メカニズムの論文が査読付き雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
攻撃力の違いが外集団攻撃をもたらすという仮説に関して、これまでは先制攻撃ゲームを中心に検討してきたが、過去の先行研究でも用いられてきたIPD-MDでも同様の結果になるかどうかを示す必要がある。令和元年度はその下地となる実験を実施した。フレームの違いでは外集団攻撃が高まらないことが確認されたため、今後、IPD-MDにおいて攻撃力の違いを操作した実験を行うことができる。当初の申請計画とは異なる研究の展開になってきているが、外集団攻撃の心理メカニズムを理解するための実験研究は実施できており、概ね順調に研究が進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度末から実験を行う予定であったが、新型コロナ対策によって大学の実験室を用いた実験が一時停止となっている。そのため、ウェブ調査会社にデータ採取を発注する形で研究を進める。まずは、最小条件集団状況における先制攻撃ゲーム状況をシナリオの形で提示し、その状況で相手は攻撃すると思うか、自分は攻撃すると思うかを測定する実験を実施する。その上で、予算に余裕があれば追加実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度末に実施予定だった実験室実験が新型コロナ対策のために実施延期となったため。今後、ウェブ調査の形で実施していく。
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Research Products
(5 results)