2020 Fiscal Year Research-status Report
2過程モデルによる外集団先制攻撃の心理メカニズムの解明
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17K13903
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
三船 恒裕 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (00708050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内集団バイアス / 外集団攻撃 / 最小条件集団 / 先制攻撃ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は外集団への攻撃行動が生じる心理メカニズムを明らかにすることにある。令和2年度はウェブ調査の手法を用いて、内集団と外集団への先制攻撃ゲームに関する大規模なデータを収集した。 先制攻撃ゲームにおいて参加者は他の参加者と2人1組になり、画面上に現れるボタンを制限時間内に押すかどうかを決める。どちらもボタンを押さなければ両者ともに1000円ずつもらえるが、ボタンを押すと押した方が100円を支払い、押された方は500円を支払う。両者がボタンを押した場合は早い者勝ちとなり、遅く押した方のボタンは無効となる。この先制攻撃ゲームを用いた研究では、最小条件集団の内集団相手と外集団相手で攻撃率が変わらないという結果が得られているが、相手よりも自分の方が攻撃力が弱い場合には内集団相手よりも外集団相手により高い攻撃率が見られ、自分よりも相手の方が攻撃力が弱い場合には内外集団相手に差が見られないという知見もある。この知見はひとつだけの報告にとどまっており、追試研究が必要である。 令和2年度は新型コロナの流行により、実験室実験を行うことが難しくなった。そこで、ウェブ調査を用いて、最小条件集団における先制攻撃ゲームを実施することとした。その際、外集団に対する先制攻撃が「相手が先に押してくるだろう」という相手の攻撃確率の見積もりが高くなるために生じる可能性が考えられる。そこでウェブ調査では場面想定法を用いて、相手のボタン押し行動の確率を推定させた。実験の結果、内外集団相手でボタン押し行動の確率推定に差は見られなかった。これは相手の行動予測とは異なる理由で内集団バイアスが生じる可能性を示唆しているが、その後に測定した自分自身の行動(その状況でボタンを押すと思うか否か)では内集団バイアスが観測されず、ウェブ調査ないし場面想定法という手法自体に問題がある可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
攻撃力の違いが外集団攻撃をもたらすという仮説に関して、先制攻撃ゲームを用いた追試がウェブ調査ではうまくいかない可能性が示された。先行研究の再現可能性を検討するという意味では順調と言える。また、昨年度までに実施した実験に関しては現在、論文化を進めており、投稿までもうすぐという段階である。ただし、新型コロナの流行によって実験室実験を行うのが難しく、その点において進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は変動報酬をつけたウェブ実験ができなかったが、変動報酬が可能なウェブ調査会社を見つけることができた。予算の関係で大規模な実験を行うことが難しいかもしれないが、調査会社をとおしてか、あるいは新型コロナの流行状況を見ながら実験室実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度末に実施予定だった実験室実験が新型コロナ対策のために実施延期となったため。今後、ウェブ調査の形で実施していく。
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