2017 Fiscal Year Research-status Report
日中比較による中国写字書法教育史の基礎的研究―中華人民共和国建国を起点として―
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17K14044
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
草津 祐介 都留文科大学, 文学部, 非常勤講師 (30765160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中華人民共和国 / 写字書法教育史 / 書写書道教育史 / 小学国語課程標準 / 小学語文課程暫行標準(草案) / 文字改革運動 / 小学語文教学大綱(草案) / 識字教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中華人民共和国の教育法規および教材の変遷を整理分析し、中国の写字書法教育史の構築を目指しておこなっているものである。 本年度は、中華人民共和国の建国期を1950年から1957年とし、建国期の小学校における写字書法教育に焦点を絞り研究をすすめた。中華民国期の1932年11月制訂の『小学国語課程標準』、1950年8月制訂の『小学語文課程暫行標準(草案)』、1956年秋公布の『小学語文教学大綱草案(初稿)』、1956年10月制訂の『小学語文教学大綱(草案)』を取り上げ、中華民国から中華人民共和国への政府の変化および中華人民共和国建国期における変化を教育法規の分析によりおこなった。 その結果、中華民国から中華人民共和国となり、『小学語文課程暫行標準(草案)』では、写字は実用の文字を学ぶものであり、美しさを重視してはいけないと明確に位置づけられ、言語としての正確性、言語運用上の利便的な教育が写字に求められるようになっていることを明らかにした。『小学語文教学大綱(草案)』では、小学校第一学年に「準備課」が新設され、識字教育も独立した教育内容として加わるなかで、写字も言語教育として識字教育と強く結びついていった。 中華人民共和国建国期の小学校における写字教育は、文字改革運動と連動し、識字教育と強く結びつき変化していった点が大きな特徴であると位置づけられる。筆記用具についても毛筆は推奨されず、万年筆の準備ができない場合は毛筆を使用していいという位置づけは特筆すべきである。伝統的な書法教育から離れ、字源に遡らず、字形に基づいてて字音を教え、字義を説明するという識字教育と強く結びついた写字教育が作り上げられていくことになり、写字の授業数が大幅に減ることになっていったのが建国期の小学校における写字教育であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に基づき、資料収集、資料調査が進められ、論文発表および口頭発表がおこなえているが、予想以上に資料が多く見つかっており、資料の読解および調査に遅れが見られるため。
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Strategy for Future Research Activity |
中華人民共和国建国期の中等教育における写字書法教育の実態解明を文献の整理・分析によりすすめるとともに、建国期写字教育の日中比較および語文全体における中華民国から中華人民共和国への変遷の考察を進め、語文の教育内容の変化と写字の教育内容の変化を並行して考察していきたい。併せて、建国期以降の資料調査も進めていきたい。
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Causes of Carryover |
重要な購入予定の図書が高額で今年度予算で購入できず、次年度予算と合算して購入予定であるため。
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Research Products
(2 results)