2019 Fiscal Year Research-status Report
日中比較による中国写字書法教育史の基礎的研究―中華人民共和国建国を起点として―
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17K14044
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
草津 祐介 都留文科大学, 教養学部, 特任准教授 (30765160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 書法練習指導 / 書法教育 / 写字教育 / 中国の教科書 / 書写書道教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、中華人民共和国の小学校で現在実施されている写字書法教育について、2015年から11種の検定教科書が使用されるようになった経緯を分析するとともに、11種の検定教科書を材料とし、11種間の分析、日中間の比較分析をおこなった。現在の写字書法教育に関する教育法規の分析はすでにおこなっており、その法規下における教材の分析をおこなうことにより、より具体的に中国の写字書法教育の特徴を明らかにするためである。 本年の主な研究成果は2つある。一つ目は、書教育国際会議「日中韓三国の書教育と教科書」(2019年8月21日)において報告した「中華人民共和国の小学校における教科書『書法練習指導』(北師大版)について」である。本報告では、11種中最も採択率が高かった1社版を取り上げ、その構成等について分析をおこない、その特徴を明らかにした。 二つ目は、「日中比較による中華人民共和国小学校の検定教科書『書法練習指導』に関する研究」(『書写書道教育研究』第33号、全国大学書写書道教育学会)において、中国の現在の書法教育の特徴について以下の5点を指摘した。①硬筆の位置づけが低い。(日本の書写教育との差異)②古典に基づき繁体字によって学習している。(日本の書道教育との類似性)③段階的、系統的に学習を進めていく学習の方法論が見られる。(日本の書写教育との強い類似性)④徹底的な字形指導に重点を置く。(日本の書写教育は運筆指導へ力点)⑤全体として文化教育としての性質が非常に強い。 本年は、書法教育の具体的な教材について、中国の小学校で使用されている教科書について、11社間の比較分析することにより、中国の教科書間での差異を明確にするとともに、中国の教科書に共通する特徴を明らかにできた。さらに、日本との比較分析をおこなうことで、日本の書写書道教育を省察する視点を提供できただろうと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代の中華人民共和国の小学校における写字書法教育について、建国から現代までを通した研究ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究の最終年度となる。 「文字を書く」教育が主に小学校の写字教育でおこなわれていた中華人民共和国において、2013年の『中小学書法教育指導綱要』の制訂以降、書法教育としておこなわれるようになっていく。中華人民共和国建国から現代にいたる写字書法教育の変容の背景にあるものをしっかりと考察し、これまでの研究を総括していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度、必要に応じて機器を購入するため、次年度分を前倒し請求したため。
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Research Products
(13 results)