2017 Fiscal Year Research-status Report
ケーラーでない開複素多様体の幾何と4次元トポロジー
Project/Area Number |
17K14193
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
粕谷 直彦 京都産業大学, 理学部, 准教授 (70757765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 開複素多様体 / 接触構造 / 楕円曲線 / 対数変換 / 4次元トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは松本-深谷ファイブレーションと呼ばれる4次元トポロジーの例を利用して、4次元ユークリッド空間上にケーラーでない複素構造の初の例を非可算無限個構成した。コンパクト複素曲面の場合とは対照的に、これまでケーラーでない本質的に開な複素曲面の例はこの例以外知られておらず未知の領域である。したがって、その構成法の一般化を行うというのは重要かつ自然な取り組みである。本研究ではこの構成法の一般化を通じてケーラーでない開複素曲面と4次元トポロジーとの結びつきをより明らかにしていくことを目標としている。 その中で研究代表者は上記の構成法を楕円曲面に対する対数変換の変種と捉え直し、その一般化の定義を行うことで他のケーラーでない開複素曲面の例の構成の基礎固めをすることを初年度の目標として定めていたが、実際にその定義に成功した。当初はFischer-Grauertの定理をファイバーがコンパクトでないときに拡張することによって対数変換の変種が定義できるという想定であったが、実際には楕円曲面の標準的な局所モデルを用いることによってもっと簡単な定義を行うことに成功した。当初の予定よりも明示的なモデルが得られたので、今後構成を行う上でも有利な状況であると考えられる。 ただし、定義ができたことはよいことであるが、それによって新たな例が生まれて初めてその意義が高まるものである。それについては当初の計画通り2年目に例の構成を行ったうえで論文にまとめて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定よりも簡単に楕円曲面に対する対数変換の変種を定義することができた。結局の所、Fischer-Grauertの定理の拡張を証明する必要はなく、楕円曲面の標準的な局所モデルを用いることで十分であった。これにより4次元ユークリッド空間以外のケーラーでない開複素曲面の例を構成できる状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の目標であった対数変換の変種の定義はできたので、これをもとに2年目はケーラーでない開複素曲面の例の構成およびその境界に現れる接触構造の特定を行い、これを1本の論文にまとめる。ただし、この変換は結局楕円ファイブレーションからスタートしなければならないので、構成できる例のトポロジーに強烈な制限がかかる可能性がある。 そこで当初3年目以降に予定していたEliashbergの議論の一般化の検討を前倒しで行うことも視野に入れる。また、構成した複素曲面内の正則曲線の境界となりうる接触構造に横断的な結び目の分類、といった新たに発生した問題に取り組むことも考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究集会への出張が、研究遂行上調整がつかず取りやめたため、次年度使用額が生じた。次年度に共同研究者Daniele Zuddas氏を日本に招聘する際の旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)