2020 Fiscal Year Research-status Report
ケーラーでない開複素多様体の幾何と4次元トポロジー
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17K14193
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
粕谷 直彦 京都産業大学, 理学部, 准教授 (70757765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 開複素曲面 / 接触構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目標の一つである「任意の3次元閉接触多様体は強擬凹複素曲面の境界として実現可能か?」という問いを肯定的に解決し、さらに接触多様体を充填する複素曲面はケーラーにも非ケーラーにもとれることを証明した。この結果は2002年にEtnyre-Hondaによって示された「任意の3次元閉接触多様体はconcave symplectic fillingを許容する」という定理のholomorphic versionと解釈することができる。また、任意の2つの3次元閉接触多様体を複素コボルディズムでつなげること、さらにそのコボルディズムはケーラーにとれることを証明した。ただし、この場合のケーラー構造は境界の接触構造との相性が悪く、得られる複素コボルディズムは必ずしもシンプレクティックコボルディズムとは限らない。 今回我々がとった手法は、研究実施計画に記した通り、Eliashbergのハンドル接着によるシュタイン多様体の構成法を参考にしたものである。Eliashbergの方法では、強擬凸境界上のルジャンドル結び目に沿って、ラグランジュ円板をcoreとする正則ハンドルを接着するが、我々の方法では、強擬凹境界上の横断的結び目に沿って、正則円板をcoreとする正則ハンドルを接着する。この違いが我々のアイディアの本質である。これらの内容は、Daniele Zuddas氏との共著論文としてまとめ、現在学術雑誌へ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度後半に共著者のDaniele Zuddas氏の異動に伴って執筆活動が遅れたことと、今年度のコロナ禍の影響で研究成果を研究集会で発表することがほとんどできなかったことが原因である。しかし、論文自体は完成し学術雑誌に投稿中であることや日本数学会2021年度年会の一般講演で発表できたことから、最低限の目標は達成できたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
研究集会などでの発表を通じて、研究結果の周知を図る。実際に、日本数学会2021年度年会の一般講演で発表を行った結果、すでに5月中に2つの講演が決定しており、これを継続していきたい。また、「任意の3次元閉接触多様体はケーラーな強擬凹複素曲面の境界として実現できる」ということは証明できたが、ケーラー曲面に対して境界に横断的なリュービルベクトル場の存在を要求しても実現可能かどうかが重要なポイントなので、この課題にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、共著者のDaniele Zuddas氏を招聘する計画を延期せざるを得なくなった。次年度、招聘可能な状況となれば計画を実施する。また、大学で使用していたデスクトップパソコンが壊れたので新しいパソコンを購入する予定である。
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