2017 Fiscal Year Research-status Report
局所構造およびパリティの観点から紐解くプラズマ乱流のマルチスケール相互作用
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17K14424
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前山 伸也 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (70634252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / プラズマ乱流 / マルチスケール物理 / 非線形相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでイオンスケール揺動に焦点があてられることが多かったプラズマ乱流研究において、従来の電子・イオン間スケール分離の仮定を覆すマルチスケール乱流の新しい理論的枠組みを開拓しようとするものである。マルチスケール乱流の直接数値シミュレーションによりイオンスケール乱流と電子スケール乱流間の相互作用を直接的に評価し、それに基づいてマルチスケール乱流相互作用の包括的理解を目指す。
平成29年度は、マイクロティアリングモードと電子温度勾配モードのマルチスケール相互作用について、ジャイロ運動論的シミュレーションコードGKVを用いて解析を行った。その結果、ポロイダル方向にイオンLarmor半径程度のスケールを持つマイクロティアリングモードが、電子Larmor半径スケールの微視的不安定性である電子温度勾配モードによって安定化されうることを新たに明らかにした。さらに、平成26~28年度の科研費若手(B)研究課題「マルチスケールプラズマ乱流におけるミクロメゾスケール渦の形成・消失過程の解明」において開発された、ジャイロ運動論的三波結合伝達関数の流体近似解析手法および部分空間伝達解析手法を適用してマルチスケール相互作用の詳細解析を行った。その結果、マイクロティアリングモードの持つ半径方向に局在した電流シート構造に起因する、低ポロイダル波数であるが高径方向波数の揺動が、電子温度勾配モードの作り出すストリーマ構造により減衰されることが示された。つまり、電子スケール乱流はマイクロティアリングモードの持つ局所電流シート構造を破壊することでマイクロティアリングモードを安定化しうる。
このことは、イオンスケールの乱流揺動が作り出す電子とイオンの中間的なスケールの構造(サブイオンスケール構造)を介した相互作用が電子・イオン間マルチスケール相互作用の持つ普遍的な性質であるという仮説を支持する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題名および平成29年度の研究実施計画にて言及した通り、”局所構造”に起因するマルチスケール相互作用の同定が達成された。電流シート幅の評価により、線形理論見積もりや単一スケール乱流解析に比べてマルチスケール乱流では電流シート幅が広がり、局所構造が電子スケール乱流により破壊されていることを示した。
マルチスケール相互作用による電流シートの破壊に関して、計画で言及していた簡易的な理論モデルの構築には至っていないが、直接数値シミュレーションの詳細解析に立脚した物理機構の解明に注力した結果であり、本研究の性質上、そうした精緻な解析にこそ強みがある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のもう一つの主題である”パリティ”に基づく解析を進める。[Sugama, PPCF (2011).]や[Ishizawa, JPP (2015).]で論じられているように、イオン温度勾配モード・補足電子モード・運動論的バルーニングモードは偶パリティ、マイクロティアリングモードは奇パリティを持つ。平成29年度には、京都大学の石澤明宏准教授と、パリティ分離解析のフラックスチューブシミュレーションへの適用について議論を行った。これをさらに進展させ、パリティ分離に基づくマルチスケール乱流相互作用の解析を展開する。
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Causes of Carryover |
投稿中の論文が出版まで至らなかったため。
使用計画としては、現在投稿中の論文の出版費用に充てる。
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