2018 Fiscal Year Research-status Report
verification for the removal of tritium in stainless steel by using super-permeation
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17K14901
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
小林 真 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50791258)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トリチウム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究において、中性子照射などにより照射欠陥を形成させた金属材料への重水素プラズマ曝露を行い、その脱離や滞留挙動などを実験的に評価した。その実験結果に基づき、材料内部における水素同位体のダイナミクスを表現するシミュレーションコードの最適化を進めた。この最適化により、金属内部及び表面における水素同位体の移行を理解することで、水素同位体透過時における予測の確度向上が見込まれる。 実験では、重水素の測定は昇温脱離法を用いて行った。一方、欠陥及び重水素の分布は実測できないため、シミュレーションにおけるフリーパラメータとし、ある分布を与えた時の重水素脱離挙動を計算により予測し、実験データとの比較からパラメータを決定した。 上記研究と併せて、ステンレスにおけるトリチウムの滞留要因と予測される酸化膜における水素同位体の滞留挙動や透過挙動への影響についても実験的に調査した。酸化膜を大気下での加熱により形成し、その後重水素ガス曝露を行った。形成した酸化膜は酸化時間と共に厚く形成することがわかった。一方、酸素の拡散は酸化膜の形成により抑制されるため酸化物は表面に偏析する状態で収束すると考えられた。この酸化膜形成速度の抑制効果により、重水素の滞留・脱離挙動には酸化膜厚さの影響は殆ど確認できなかった。 上記の研究についてはそれぞれ国際会議にて発表を行い、既に1報は受理済みである。また、2019年度前期中に関連する論文の投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は超透過現象を効果的に用い、ステンレス中に滞留したトリチウムを高速に除染することで核融合炉で主に使用され、炉全体において高いトリチウムインベントリが予測されるステンレス材料をリサイクルできるようにするためのものである。 本研究ではこれまでに小さなステンレス片にトリチウムを含んだ水素同位体をガス曝露により滞留させ、その後の加熱や真空排気、水素同位体などにより脱離する水素同位体を計測、その脱離を再現できるようなシミュレーションコードを構築することに注力してきた。しかしながら、実際の炉で使用されるステンレス材料は大面積且つ厚いため、本研究で実施された実験及びシミュレーションコードの適用性を十分に評価する必要があるが、現状ではそのような作業はできていない。 併せて、想定されるトリチウムインベントリを正確に予測しなければ除染法の適用範囲を決めることはできない。現状の炉設計やサブシステム設計において、精度の高いトリチウムインベントリやステンレス中の透過速度などが可能なシミュレーションコードの開発は発展途上である。 次年度は本研究の最終年度であるため、上記の問題を解決するコード群開発や大型装置における実験データとの突合せなどを重点的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きシミュレーションコードの開発に必要な物理化学定数の算出を実験的に行う。具体的には、水素同位体のステンレス表面酸化膜における再結合定数などを明らかにする。併せて、大規模処理などで必要になる流体シミュレーションも現状のシミュレーションコードに取り込むことで、実用性の高いコードとする予定である。 また、炉環境におけるトリチウムインベントリを高い確度で予測するため、核融合炉サブシステムにおける水素同位体輸送コードを開発する。具体的には、プラズマ排ガス処理系、深冷蒸留塔のよる同位体分離系、水素吸蔵合金中の水素同位体貯蔵系における水素同位体の輸送計算を行うコードを開発すると共に、これらのコードの統合による核融合炉内の燃料循環シミュレーションを行う。これにより各サブシステムにおけるトリチウムの状態・密度を評価し、そのステンレスとの接触面積及びステンレス重量から除染が必要なトリチウム量の予測を行う。 上記の研究および今年度までに得られた成果をまとめ、論文発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進展が若干遅れているため。次年度は実験装置の必要機器の洗い出しの後、物品購入に充てる。併せて、研究成果報告のための予算に充てる。
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Research Products
(4 results)