2018 Fiscal Year Research-status Report
意思決定の習慣化を司る脳神経回路:皮質線条体路を起点とした脳内ネットワークの解明
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17K14951
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉岡 望 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (20708375)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 皮質線条体路 / 意思決定 / 習慣化 / ウイルスベクター / イムノトキシン / 道具的条件付け / マウス遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含めた動物は、学習を重ねることで結果を予測しながら臨機応変に行動する“目標指向型”の意思決定から、繰り返した行動を自動的に実行する“習慣型”の意思決定に切り替えて円滑な行動を可能にする。本研究では、意思決定の習慣化を司る脳神経回路として、皮質線条体路を起点とした脳内ネットワークの解明に取り組む。平成30年度は、前年度に確立したウイルスベクターによる神経路選択的な遺伝子発現系を応用した化学遺伝学と光遺伝学を用いた皮質線条体路の機能操作を実施した。 逆行性レンチウイルスベクターを線条体に注入してCreをマウスの皮質線条体路に発現させてからCre依存的に人工受容体のDREADDを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)-Flexベクターを大脳皮質に注入して、レンチウイルスベクターとAAVベクターに二重感染した皮質線条体路にDREADDを発現するマウスを作製した。DREADDのリガンドであるClozapine-N-Oxide(CNO)を腹腔内投与することで、皮質線条体路を薬理学的に抑制したマウスにおいて道具的条件付け学習を実施して、皮質線条体路の行動生理学的な役割を解析した。同様の二重感染法によって、皮質線条体路にチャネルロドプシンを発現するマウスを作製し、このマウスの大脳皮質への光刺激により皮質線条体路の活動操作を試みた。現在までに線条体には光照射によって発火する神経細胞は同定されていないが、大脳皮質では光刺激によって発火する神経細胞を同定できた。 また神経回路選択的な遺伝子発現系として、マウス遺伝学を応用した方法にも取り組んだ。現在までに、様々なCreドライバーマウスとの掛け合わせによって、特定の神経領域において遺伝子発現を操作できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に確立した光遺伝学と化学遺伝学を皮質線条体路の行動生理学および電気生理学的な解析に応用するためには、幾つかの改良点が必要だと分かった。来年度は、それぞれの技術を改良して目的を達成していく。また当初の計画ではウイルスベクターを用いて神経回路選択的な遺伝子発現を達成する予定であったが、新たにマウス遺伝学を応用した遺伝子発現系にも取り組んだために当初の計画よりも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスベクターによる遺伝子発現量を向上させるために、新しいセロタイプのAAVベクターによる遺伝子発現系を確立する。またDREADDとは別の化学遺伝学によって皮質線条体路を抑制する系の確立や、マルチユニット記録によって線条体の神経活動を計測する系の確立を行う。一方で、前年度までに実施したイムノトキシンによって皮質線条体路を選択的に破壊したマウスの行動生理学的な解析について、原著論文を準備していく。 またウイルスベクター以外にも、マウス遺伝学を応用した神経回路選択的な遺伝子発現系の確立と神経機能解析を同時に進めていく。
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Causes of Carryover |
今年度は、計画の一部に遅れが生じたこともあり、来年度に予算の一部を繰り越した。 来年度は、原著論文の発表に向けて残りの予算を計画的に使用していく。
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