2017 Fiscal Year Research-status Report
ノード繊毛特異的に繊毛打が失われるCFAP53の解析
Project/Area Number |
17K15123
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井手 隆広 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (40777801)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CFAP53 / Ccdc11 / ノード繊毛 / 外腕ダイニン |
Outline of Annual Research Achievements |
ノード繊毛は他の運動性繊毛と比較して、(1)運動様式が回転運動で立体波である、(2)内部構造が9+0であるという非常にユニークな特徴を持つ。本研究は、ノードで特異的に繊毛運動が消失するCFAP53に着目して、ノード繊毛とその他の繊毛で何が異なるのかを明らかにすることを目的としている。LacZを用いた発現解析でCFAP53は運動性繊毛を持つ細胞で発現していることが明らかとなり、CFAP53-Venusを発現するマウスを用いた解析によりCFAP53-Venusは繊毛内に局在することが明らかになった。CFAP53を欠失するとノード繊毛では、繊毛運動の原動力であるモータータンパク質の「外腕ダイニン」の大部分が消失するが、気管繊毛では一部の外腕ダイニンしか消失しないことが明らかとなった。CFAP53に対する特異抗体を作製し、繊毛に対する生化学的アプローチによりCFAP53は繊毛の内部構造である軸糸に非常に強く結合していることが明らかとなった。従って、CFAP53は外腕ダイニンを軸糸上に強く結合・維持させるのに必要なタンパク質であると考えられる。しかし、気管繊毛では外腕ダイニンが大きく失われないことから、ノード繊毛以外の細胞では外腕ダイニンの結合に重要な別のタンパク質が存在していると考えられる。現在、DRC(ダイニン調節複合体)、内腕ダイニンI1/fという2つの構造に着目し、ノード繊毛特異的な外腕ダイニンの結合機構についてCFAP53との関係や結合力について解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、CFAP53の軸糸内局在やCFAP53と相互作用するタンパク質の同定を行う予定であった。局在について、ノード繊毛において免疫電子顕微鏡によるアプローチを行っているが、ノード繊毛は数が少なく条件検討が難しいので繊毛内の局在を明らかにできていない。現在、ノードよりも繊毛の数が多くサンプリングの容易な気管繊毛を用いて解析を行っている。CFAP53の相互作用因子の同定については、マウス遺伝学を用いた手法の他に化学架橋を用いたアプローチを行っている。CFAP53ノックアウトマウスについて、気管繊毛に注目したところCFAP53欠失では外腕ダイニンの一部が消失することが明らかになった(ノードではすべて消失する)。このような一部消失は、CFAP53が外腕ダイニンの輸送や組み立て段階で機能するタンパク質ではなく、軸糸上に結合・維持させるのに必要なタンパク質であることを示唆する結果である。また、CFAP53に対する特異抗体を作製し、内在性タンパク質に対する免疫染色や繊毛を用いた生化学的アプローチが可能となった。そこで、CFAP53の軸糸への結合を調べるために、単離した気管繊毛を0.6M NaClの高塩強度溶液で処理したところ、CFAP53は溶出されなかった。外腕ダイニンは0.6 M NaClで溶出されるためCFAP53は、軸糸を構成するダブレット微小管に強く結合、あるいは埋め込まれていると考えられ、大まかな局在や性質を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、引き続きCFAP53の局在や相互作用因子について探索を行う。繊毛軸糸内の局在については超薄切片を用いる観察方法の他に、ネガティブ染色によるアプローチを模索しており軸糸微小管の表面における局在や存在パターンについて明らかにする予定である。相互作用因子の探索については、特異抗体が得られたことで内在性タンパク質の免疫沈降が可能となった。しかし、軸糸を構成する微小管は非常に安定なので、軸糸に対して化学架橋を行いCFAP53と相互作用因子を架橋してから、微小管をSDSで破壊し、続いて非イオン系界面活性剤のNP40で余剰SDSを取り除いた後、免疫沈降を行う方針を考えている。化学架橋により、CFAP53と外腕ダイニンコンポーネントが結合していた場合は、CFAP53が外腕ダイニンの結合に直接関与していることが明確になると考えている。また、ノード繊毛以外の細胞でCFAP53と共に外腕ダイニンの結合に関与する構造として着目しているDRC(ダイニン調節複合体)・内腕ダイニンI1/fについて、それぞれを構成するCcdc65・Wdr63という遺伝子のノックアウトマウスを作製・入手する。Ccdc65に変異を持つヒトでは気管の外腕ダイニンは正常であり、Wdr63のノックアウトマウスについても気管の外腕ダイニンは正常である。そこで、CFAP53との2重変異体を作製することで気管繊毛における外腕ダイニンの結合が大きく減少するかどうかを検討する。
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