2017 Fiscal Year Research-status Report
長時間イメージングによる植物の根冠細胞層の空間的な分化制御機構の解析
Project/Area Number |
17K15140
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
郷 達明 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (80511419)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物 / シロイヌナズナ / タイムラプス観察 / 根冠 |
Outline of Annual Research Achievements |
維管束植物の根冠は,根の先端を覆う数層の細胞層で構成され,根の成長を制御する重要な組織である。根冠は、細胞層の新生,分化,そして最外層の剥離が連動して起きることによって、一定の形状を維持している。本研究では,新たに開発した水平光軸型動体トラッキング顕微鏡をもちいて、根冠細胞層の新生から剥離にいたる一連の過程を捉えて,動的に変化する根冠を解析する。また,根冠特異的に発現する遺伝子の機能解析を行い、根冠の成熟・剥離を制御する分子機構を明らかにする。 1.長時間タイムラプスイメージングによる根冠細胞層の分化と剥離過程の動的解析 水平光軸型動態トラッキング顕微鏡におけるサンプル調整方法、および制御プログラムの改良によって、重力方向に従って下方へと伸長する根の根端を追尾しながら、5日間(120時間)に渡って、経時観察することが可能になった。また、多点同時観察システムを導入し、効率的かつ安定的な観察が可能になった。このシステムを使用することで、シロイヌナズナの根冠最外層は、独自の周期に従って、剥離することが明らかになった。また、剥離の開始に先立って、根冠最外層特異的に細胞壁修飾酵素の発現が上昇することが明らかになった。 2.根冠の分化および剥離を制御する分子機構の解析 根冠剥離を制御する転写因子BEARSKIN1 (BRN1)およびBRN2の下流因子の探索を行った。BRN1/2のトランスクリプトーム解析とChIP-Seq解析から絞り込んだ遺伝子のうち、根冠外層における細胞内構造や分泌を制御する可能性が示唆された細胞内膜輸送の制御因子の解析を進めた。見出した細胞内膜輸送の制御因子を機能改変したところ、根冠の成熟・剥離に伴う細胞の液胞化が阻害され、剥離様式にも変化が見られることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究において、水平光軸型動態トラッキング顕微鏡システムの改良を進めた結果、伸長中の複数の根を同時に、5日間の長期間に渡って捉えることに成功し、根冠剥離に精密な周期性があることを初めて見出した。根冠の成熟および剥離を詳細に解析するための基盤技術がほぼ完成したと考えており、今後の研究の推進につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.根冠分化の変異体やレポーターをもちいたタイムラプス観察 根冠剥離を制御する転写因子BRN1およびBRN2や、その下流で発現制御される遺伝子(RCPG)の変異体では根冠剥離に異常が見られる。これらの変異体における根冠の動態をタイムラプス観察して、野生型の剥離様式との比較を行う。今年度の研究から、根冠は概日リズムとは異なる周期によって剥離することが示唆された。このことを検証するために、概日時計の変異体において、根冠剥離の周期を解析する。
2.根冠細胞の分化に伴う細胞内構造の変化のタイムラプス観察 水平光軸型動態トラッキング顕微鏡の高解像度化、および、根冠特異的な細胞内構造マーカーの整備を進めて、根冠細胞の分化に伴う細胞内構造の変化を経時的に観察する。今年度の解析から、BRN1/2の下流で発現制御される細胞内膜輸送関連因子が根冠細胞の分化および剥離に関わることが示唆された。これらの変異体背景で、細胞内構造を可視化して、タイムラプス観察を行い、表現型の解析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、水平光軸型動態トラッキング顕微鏡におけるサンプルの準備方法、制御ソフトウェアの改良、および多点観察化など、運用方法の見直しを中心的に行ったため、予定していた高解像度化などを進めることはできなかった。観察システムは成熟してきたため、次年度では高解像度化を進めていく。また、顕微鏡システムを活用した観察および解析を進めるとともに、成果発表のための旅費や論文投稿に有効利用する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Shaping 3D Root System Architecture2017
Author(s)
Morris Emily C.、Griffiths Marcus、Golebiowska Agata、Mairhofer Stefan、Burr-Hersey Jasmine、Goh Tatsuaki、von Wangenheim Daniel、Atkinson Brian、Sturrock Craig J.、Lynch Jonathan P.、Vissenberg Kris、Ritz Karl、Wells Darren M.、Mooney Sacha J.、Bennett Malcolm J.
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Journal Title
Current Biology
Volume: 27
Pages: R919~R930
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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