2017 Fiscal Year Research-status Report
大腸のIgA産生における腸内細菌による免疫制御分子機構の解明と機能性食品への応用
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17K15277
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
津田 真人 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (50525681)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫グロブリンA(IgA) / 腸内細菌 / 濾胞性ヘルパーT細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管における免疫グロブリン(Ig)A産生は、腸内細菌と免疫系の相互作用により形成され,腸管の恒常性維持のために重要である。しかし、腸内細菌の大部分が存在する大腸部位のIgA産生応答における腸内細菌による制御の分子機構は明らかにされていない。本研究では、腸内細菌環境の異なる条件のマウスを用いて解析を行った。まず、生後直後から恒常的に腸内細菌が存在しない無菌マウスの腸管関連リンパ組織を解析したところ、パイエル板および盲腸、結腸のリンパ節の濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞および胚中心B細胞が通常マウスに比べて有意に減少しており、特に、無菌マウスの盲腸および結腸リンパ節ではTfh細胞および胚中心B細胞がほとんど存在していないことを明らかにした。さらに、無菌マウスでは腸管各部位および血清中のIgAおよびIgGサブクラス抗体量が通常マウスに比べて低下する傾向を示した。次に、広範囲スペクトルの抗生物質を成熟マウスに4週間投与することにより腸内細菌を制限したところ、盲腸リンパ節のTfh細胞と胚中心B細胞が顕著に減少した。さらに、小腸および大腸の粘膜抽出液中IgA量および盲腸粘膜抽出液中IgGサブクラス抗体量が抗生物質投与により低下する傾向を示した。また、通常マウスの各腸管関連リンパ組織の胚中心B細胞の抗体発現を解析したところ、盲腸リンパ節および結腸リンパ節の胚中心B細胞がパイエル板の胚中心B細胞に比べてIgA発現が低いことを明らかにした。 腸内細菌に対して腸管免疫系が過剰に反応する条件して設定したドデシル硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルマウスにおいては、予想していた腸管関連リンパ組織におけるTfh細胞の増加や腸管における抗体産生の亢進が認められなかったため、DSS投与条件の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は「小腸および大腸部位の各リンパ節のTfh細胞の分化、誘導とIgA産生応答における腸内細菌の役割とその分子機構の解析」のうち、無菌マウス、抗生物質投与マウス、大腸炎モデルマウスの解析を行った。無菌マウスおよび抗生物質投与マウスの大腸部位のリンパ節の解析から、大腸のリンパ節におけるTfh細胞と胚中心B細胞の分化、誘導における腸内細菌の存在の関与が小腸よりも大きいことを示すことができた。また、通常マウスにおいて大腸のリンパ節の胚中心B細胞は小腸と異なる抗体産生応答を有する可能性を示した。 当初予定していた抗生物質投与後に腸内細菌を回復させる条件の解析と、予想していた結果が得られなかったDSS誘導性大腸炎モデルの解析は、DSSの投与条件に改変を加えて来年度に持ち越しとする。
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Strategy for Future Research Activity |
抗生物質投与後に腸内細菌を回復させた条件の解析とDSS誘導性大腸炎の投与条件の改変を加えた解析を行う。 腸内細菌が小腸および大腸部位の各リンパ節のTfh細胞の分化、誘導を促進する分子機構を明らかにするため,腸内細菌由来の菌体成分を認識する受容体のシグナル分子の遺伝子(MyD88)欠損マウスを用いて,平成29年度と同様の解析を行う。 通常マウスの小腸および大腸のリンパ節のTfh細胞のDNAマイクロアレイ解析およびレパトア解析を行い、小腸および大腸のTfh細胞の機能性および抗原特異性の違いを明らかにする。当初は通常マウスと大腸炎マウスの両方を解析する予定であったが、平成29年度の結果において、大腸部位のリンパ節のTfh細胞の分化、誘導は腸内細菌の存在に大いに依存していることが明らかになったことと、大腸炎マウスにおいて期待していたフェノタイプが観察されなかったことから通常マウスでのみ解析を行う。小腸と大腸のリンパ節のTfh細胞に違いが認められた因子について、mRNAおよびタンパク質発現の確認を行うとともに機能性の解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた抗生物質投与後に腸内細菌を回復させる条件の解析に遅れが生じたため。上記実験に使用する生化学実験試薬と細胞培養用ディスポーザブル器具類の購入のため使用する。
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